Netflix「After Life」で学ぶイギリス英語 その7

イギリス英語

yaozoです。

 

Netflixの人気オリジナルドラマ「After Life」で楽しくイギリス英語を勉強しましょうというシリーズ企画。今回はその第7回です。

イギリス英語ならではの表現を、s1e2の後半からピックアップして解説していきます。

 

summat

の言葉は、このドラマで聞くまで全く知りませんでした。発音は「サマット(ˈsʌm.ət)」となります。Cambridge Dictionaryでは、「something」の同義語で、「UK NOT STANDARD」とあります。つまりsomething の方言ということですね。Wiktionaryでは「Britain、especially Northern England. Yorkshire」とまで限定されています。

語源の項を見ると「somewhatの方言変形」とあります。このドラマの舞台はTamburyという架空の町の設定ですが、Gervais自身はイングランド南部のレディング出身なので、なぜTonyが北部なまりを使うのかわかりません。もしかするとEstuary Englishの1つなのかももしれません。

日本でも、東京の若い方々が、意図的に地方の方言を取り入れて上の世代と差別化を図る、ということが良く起こります。古くは語尾に「~じゃん(東海地方→横浜)」をつけたり、「~だべ(神奈川/八王子)」「~っしょ(北海道)」を持ってきたりしてきましたね。一番最近で私が知った例では、女性が一人称のことを「うち(関西)」と呼ぶようになった事例があります。おそらくそんな感じで、北部訛りをロンドンあたりの中年以降の世代が使うようになったという可能性もあります。

ご存知の方はコメントでご教示いただけると助かります。

 

gob

職場のPCの前で、またなにやら食べているLenny。Tonyは新人のSandyに「見ろ、あいつまた食うぞ」と聞えよがしにからかいます。Lennyは意に介さずこういいます。

I put the food in my gob, I chew it, I swallow it, just like everyone else.

食べ物を口に入れて、噛んで、飲み込むんだよ。誰でもやることだろ。

gobもはじめで見た/聞いた言葉ですので、Cambridge Dictionaryで調べてみると、「口」の意味で、UK VERY INFORMALとありました。用例では下の文章がありました。

Keep your gob shut

黙ってろ

どれくらいINFORMALかは、大体感じがつかめますね。普通の大人はちゃんとした場所では使わない言葉のようです。

 

fish fingers and beans

ある日Tonyは、甥のGeorgeの子守をMattから頼まれて、自宅で2人きりで過ごしています。特にやることもないので、「飯でも食うか?」と、近くのレストランに出かけます。そこで注文するのが、このfish fingers and beansです。fish fingersは正に指の形をした長方形の白身魚のフライで、これに豆料理と、chips(イギリスでは「ポテトチップス」ではなくて「ポテトフライ」のこと)がついたワンプレートの一品のようです。

私がロンドンに行ったときには、もちろんfish and Chipsは食べましたが、これは食べませんでしたし、そもそもその時は知りませんでした。あまり評判の良くないfish and Chipsは想像以上にとてもおいしかったのですが(2か所で食べましたがどちらも美味でした)、今度またロンドンに行くことがあっても、このプレートは個人的にちょっと注文しそうにないです。

ちなみにこのときあまりおなかの空いていなかったTonyは、Kidsメニューにあるfish fingers and beansを、甥と自分用に2つ注文しようとします。しかし店員から、「これはKidsメニューなので大人には出せません」と断られます。

議論のあげく、Tonyは「なら、この子が2つ食べるから」と無理やり2つ注文します。「あくまでも、お子さん用ですからね」と念押しをされて出されたプレートを、ほんの少し眺めた後、店員をにらみつけながら、なんと手づかみで口に入れてみせます。

 

takeaway

これも有名な英米で違う言葉の1つですね。私たちはアメリカ流に「テイクアウト(takeout)」といいますが、イギリスでは「takeaway」です。よくイギリス人とアメリカ人が出てきてお互いの方言を比較する動画で、おたがいに「へんなの~」と言っています。私たちからすれば、先にアメリカ式が入ってきて定着してきただけで、どちらも特に違和感ありませんけどね。

 



ここからは、s1e3に移ります。

 

troll on twitter

これは特別イギリスに固有ではないようですが、現代語なので気になって調べてみました。

Cambridge Dictionaryでみてみると、「troll」は、名詞だと「北欧伝説に出てくる怪物」です。有名なところでは、あのムーミンの正式名称が「ムーミントロール」ですね。

そして2番目に「(わざわざネットで検索して)人々の関心を引いたり問題を起こしたりするために、インターネット上で意図的にいやがらせのメッセージを残す人」というような解説がされています。

ちなみに、大きく分けて「怪物系」と「探しまわる系」の2つの意味を持たされているtrollですが、前者と後者は語源が異なるようです。前者はノルウェイ語/スエーデン語の「troll(witch)」から持ってきた言葉です。他方、後者は低地ドイツ語の「drullen(to stroll)」から持ってきた言葉のようで、実際英語の「stroll」と意味も近いですね。

ちなみに、「探し回る」系だと「patrol」が音が近いので、語源も同じかと思って調べてみたところ「patoiller(paddle)」から来たようなので、違うようです。おそらく「pedal」「pedestrian」など「足」関連の語根「pedi」の関連語だと思います。パトロールは足を使って行いますからね。

英語を勉強していると、「どうして同じ1つの言葉なのに、全く何の関係もない意味があてられているんだろう」ということがありますが、このように、語源が違う言葉がだんだん語形変化して、同じ綴りを用いることになったということが多いですね。

私たち英語学習者を悩ませるこのような言葉を専門用語では「同綴(どうてつ)同音異義語」と呼びます。例としては「sound」がよく知られています。同じスペルで同じ発音ですが、名詞(および動詞)では「音(を出す)」に、形容詞では「健康な」「完全な」という意味で使われます。

前者は、ラテン語の「sonus」をルーツに持つ語であり、後者はゲルマン祖語の「sunda」をルーツに持つということで、元来別の言葉だったものが、長い歴史の中で同じ「sound」というスペルに収れんし同綴同音異語になった、ということのようです。

 

nutter

Tonyの勤務先の新聞社に頻繁に表れては、自分のことを取材して新聞に載せてくれ、としつこくからんでくる困った男がいます。

本日も、編集室で話しているメンバーの元に、その男がふい現れます。気づいた同僚が応対してもらおうとTonyに声を掛けます。「あの人誰ですか?」と尋ねる新人にTonyが答えます。

local nutter.

このあたりの変わり者だよ。

アメリが英語では「nut」という言葉で全く同じ意味を表します。

イギリス英語のスラングで「nut」は「頭」のことを指すようで、Cambridge Dictionaryでは、

Come on, use your nut.

という例文があげられています。

この例でわかるように、「nutter(英)」「nut(米)」をこのような意味で使うようになったのは、そもそも形状の相同性から「頭=ナッツ」というアナロジーがあって、これがまた一段階ずれてこのような意味で転用されるようになったものと推察されますね。

 

dig

Tonyの父はアルツハイマー病で入院しています。彼は頻繁に父親を訪ねて10分位過ごすのですが、担当してくれている看護師から、態度が悪いと指摘されます。

この時の彼が行った言葉がこれです。

Oh, is that a dig?

ええ、批判されてんの?

 

これはイギリス固有の言い回しなのかわかりませんが、日本語字幕で見ると「皮肉」みたいなことになっていたのですが、そもそもそんな意味があるなんて知らなかったで、調べてみたところ。、Oxford Living Dictionaryでヒットしました。

Informal / A remark intended to mock or criticize.

なるほど、そういう意味があるんですね。

まずは元々の意味「掘る」が意味変化して「肘や指で人のことを突っつく」になり、これがまた意味変化して「批判する」になったようです。

ちなみにTonyの父親役を演じているのは、「Harry Potterシリーズ」でホグワーツの管理人フィルチを演じているDavid Bradleyです。人気ドラマ「Game of Thrones」でも活躍していますね。アルツハイマーを患っているので、未だにTonyの妻のLisaが無くなったことを認識しておらず、「Lisaもつれてこい」「そんなことLisaに内緒にしとけよ」などと口にするわけですが、Tonyにとっては二重につらく響き、ドラマの重量を増しています。

原則的に「dark」なドラマなのですが、コメディなので、Lennyらとの掛け合いなどで軽いトーンを織り交ぜながらも、父とのシーンでまた重くしてと、軽重のリズムが巧妙なドラマとなっています。どの回もただ笑って終わらせるようなことがありません。Gervaisの脚本が光ります。

 

次回は、s1e4でイギリス英語を勉強しましょう。

 

おまけ:イギリス英語学習について

英語学習については、高額なスクールに通う前に、かなり計画的に学習誘導してくれるような、自学ツールでコツコツやるのも一つの手ではないでしょうか。 ちなみに、うちの中一の娘はこれで英語頑張ってます。

 

また、イギリス人が普段の生活で話している英語を実際に「手加減なし」で聴き取って理解したい、という方には、「生のイギリス英語を現地の生録音」を使ってしっかりと「精聴」しよう、というコンセプトで作られている↓の2冊がおすすめです。

小川直樹さんと川合良平さんというに2人による、どちらかというと文化人類学的なフィールドワーク的アプローチの「現地語採取」に近い感じで、今のイギリス英語(話し言葉)を記録し、それを文字に起こし、そして解説する、という極めて面白い企画です。

まぁ、もちろん一発目は、音声だけ聞いて自分がどれくらい聴き取れるかやってみるんですが、インタビュアーがペラペラなので、対象のイギリス人もそりゃもう普通に、言葉につまったり、省略したり、訛ったりして、全く普段通りに話してくるので、わからない箇所が多いです。それを、しっかり聴き取れるプロが、文字に起こしてくれてるわけなので、「へ~なるほど、そうやっていってるのか。わかんなかったよ」というAHA体験が味わえます。

私にとっては、大変貴重なイギリス語学習の教材です。

RedとBlueがあります。



 

また、私も大好きな「シャーロック(カンバーバッチ版)」でイギリス英語にしびれた、という人も多いと思うのですが、ファンの方にもそうでない方にも、マンガでバイリンガルでシャーロックのシーズン1の3作を再現してくれている↓の3冊が超お勧めです。

大昔、ピーナッツ(スヌーピー)のバイリンガルマンガが好きで一所懸命読んで勉強したことを思い出す。

今考えると、子供用とはいえ、学校では習わない結構難しい表現が多くて苦労しました。というより、子供用だからこそ、我々が学校で習わないような「生っぽい」英語が多いので、知らない表現が多かったですね。

とにかくマンガで勉強というのは、現代の学習方法としては最も優れたものの1つですからね。

気になったセリフ回しがあって、対訳だけでは物足りない方は、そこだけネットサーフィンして徹底的に深堀りすると言った学習方法も楽しいですね。私は結構やりました。発見が多いですよ。

個人的には、「シャーロック」はシーズン1が最高の出来栄えだと思っているので、この3作だけでいいのではないかと思います。あくまで、個人的にはですが。

寝ころびながらのイギリス英語学習、いかがでしょうかね。



 

 

 

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Posted by yaozo