Netflix「After Life」で学ぶイギリス英語 その8

イギリス英語



Netflixの人気オリジナルドラマ「After Life」で楽しくイギリス英語を勉強しましょうというシリーズ企画の今回は第8回です。今回はs1e4で勉強してみたいと思います。

 

ta

 

LennyがTonyの家を訪問する際、ちょうど例のポストマンが現れ、LennyにTonyの友達かどうかを確認したのち、ハガキを本人に渡してくれるよう頼むシーンがあります。Lennyが「いいよ」というと、ポストマンがすかさず言います。

 

Ta. You’re a friend of his are you?

ども。彼の友達だよね?

 

「Ta」は実際、若い方を中心に頻用されています。「Thank you」の代わりにほとんど「Ta」で済ませます。「Cheers」よりも簡単なので、日本語で言うなら「ども」ぐらいの感じかと想像されます。

私は、イギリスに旅行した際に、この言い回しを知らなくて、いきなりみんなが「Ta」を連発しているので、驚きました。もちろんそれに気づいた後は即刻、私もお礼を言うときには「Ta」というようにしたわけです。

 

それはさておき、このポストマンの付加疑問文「You’re a friend of his are you?」もまた興味深い表現です。

イギリス英語では付加疑問文が多用されることは以前に述べました。

なので付加疑問文自体、別に珍しくはないのですが、この付加疑問文は正確には「aren’t you?」で終わらなければなりません。

なのに、そこを「are you?」とするあたりが、なんかゆるくていいいですね。

ちなみに、これは私のリスニングミスではありません。英語字幕でしっかりと上のように書いてありましたので、意図的にこのように話しているに違いありません。

「aren’t you?」よりも疑問に思っている度合いが低いが、とはいえ断定する材料も持っていない、という場合において、形式的には疑問文の体裁で話している、といった表現のように感じました。

 

me

コックニー特有の変化の1つに、所有格の「my」を「me」に代替する、というものがあります。「My mother」なら「me mother」という具合ですね。

上の付加疑問文の場合もそうですが、方言というのは、しばしば文法的な誤りを採用する場合があります。

 

事故にあった女性が九死に一生を得た、という話を取材するTonyとLenny。女性は言います。

 

Well, it just went right through me, right through me side, out me back.

それ(その釘)が、私のこの辺りを貫通したのよ。私のおなかから背中に突き抜けたわけ。

 

1つ目の「me」は目的格なので問題ありませんが、下線部は正式には所有格を用いて「my side」「my back」とすべきところです。

話し手の雰囲気(意図的にパッとしない感じの中年女性が選ばれています)からすると、Estuary Englishをトレンディに話しているのではなく、純粋に下町訛りを話している設定かと思います。

 

ちなみに、太っていたおかげで脂肪を貫通したので命拾いした、と主張するこの中年女性に対し、Tonyは「いやいや、そもそも痩せてたら釘がそれるから、体に刺さってないでしょ」とキツい言葉を返し、また世界に仕返しを1つするわけです。



 

grabby

新人のSandyがLennyに編集ソフトの使い方を習っているときのこと。目の前で見ていたTonyが、Sandyに「なんでこんなところで働きたいんだ」とつっかかります。

「ジャーナリズムが好きだからです」とSandy。

「こんなのジャーナリズムじゃないよ」とTony。

「でも誰でもどこかでスタートしなきゃだめですよね」とSandy。

「こんなところでスタートしたら、こんなところで終わるんだよ。こいつ(Lenny)を見ろよ」とTony。

 

そこへ編集長のMattが現れて「そんなことないぞ。ここでスタートして、『The Guardian』に移ったやつもいるんだからね」と抗弁します。

広告担当のKathが、その彼(『The Guradian』に移った元記者)を評して言います。

Wasn’t here long. Was a bit grabby. I do get that a lot though.

すぐ辞めたよね。すぐ触ってきたよ。そういう人多いけどね。

 

Oxford Living Dictionaryは、「grabby」を、North American informalとしています。

意味は、下のように説明されています。単に欲ばりなだけでなく、虚栄心が強い感じです。

Having or showing a selfish desire for something; greedy.

シーン全体の文脈から判断すると、素直に上の意味から「出世欲が強かったのでこんな地方の新聞社に長くいなかった」とするほうが自然なように思いますが、字幕では「触ってくる」と訳しています。

ただ、そのあとに、

I do get that a lot though.

私の場合、そういう人多いけどね

と、自分が魅力的なので、結構触られると言っているとセリフが続く点から判断すると、動詞の「grab」を変形させた形容詞「grabby」だと解釈して、「触ってくる」ということにした字幕が正解なんでしょうね。

 

Cambridge DictionaryもOxford Dictionaryにも「触ってくる」という意味が出てこないのですが、Wiktionaryでようやく

 

Tending to grab, especially rudely or greedily

 

とありましたので、「触ってくる」という意味でも使うことが確認できました。なかなか難しいですね。翻訳の方もすごいですね。

 

after life

このエピソードで、はじめてタイトルである「After Life」という単語が、セリフの中に出てきます。

 

「afterlife」という単語は、Oxford Living Dictionaryでは、2つの意味が示されています。

  1. Life after death(死後の世界、来世)

  2. The later part of a person’s life(余生)

 

編集長でTonyの亡き妻の兄弟であるMattが、Tonyを元気づけようと、デートをアレンジしたとTonyに告げます。元気出せよ、ということで。相手も未亡人とのことです。そこへTonyは下のように返します。

「おお、そりゃいいや。共通点がいっぱいだってわけだ。彼女には、おれがまだあんたの妹と(心の中では)結婚している、って言ったのか」

「どんなに楽しいことがあっても、彼女がいなくて台無しになるんだよ。早く(死んでしまって)彼女に会いに行きたい」

 

そこでMatt。

You don’t believe in an afterlife.

来世なんか信じてないじゃないか。

 

なので、ここでは上で言う1の「死後の世界」の意味で使われています。

しかし、このドラマ全体が、妻のLisaに先立たれたTonyの「余生・後半生」を描いているという意味では、この「After Life」という言葉は、ダブルミーニングになっているように思います。

 

ちなみに、ワンワードの「afterlife」という言葉は辞書で見つかりますが、タイトルにある「After Life」といツーワードにした言い回しは見つかりません。脚本・主演・監督のGervaisにはなんらかの意図があるのかもしれませんが、いろいろ調べましたが、私にはわかりませんでした。

 

s1e4の途中ですが、長くなったので続きは次回に。








Posted by yaozo