Netflix「After Life」で学ぶイギリス英語 その3

イギリス英語



前回の投稿『Netflixで学ぶイギリス英語「After Life」その2』では、イギリス英語に特徴的な「non-rhotic」の「r」「άː」の音の話まで書きましたが、イギリス英語について考える際に、やはり対照参照すべきなのはアメリカ英語かと思います。

前回の投稿は下をクリックしてご覧いただけます。

Netflix「After Life」で学ぶイギリス英語 その2

実はイギリス英語より簡単?アメリカ英語のわかりやすさ

英国留学経験もなければ、生活したこともない私ですが、随分前からこのイギリス英語とアメリカ英語の発音のことに関して、一人ひそかに思っていたことがありました。

英語講師などの専門家の方々の中には、「アメリカ英語の発音よりは、イギリス英語の方が『発音がきれいだから』日本人には向いてるかもしれませんよ」と言う方が少なからずいらっしゃいます。どちらかというとイギリス英語を好きな方に多いように思いますので、善意からの発言に違いありません。

私の意見には、いくつかの点であまり賛成ではありません。「アメリカ英語の方が、発音も聞き取りも簡単なのでは?」「むしろ、イギリス英語の方が、いつまでたってもうまく真似できない」などと思っています。

「アメリカ英語の発音が難しい」と思わせる理由は、典型的な音がいくつかあるだけで、それを克服すれば、真似するのも聞き取るのも簡単(あくまで比較論)なのではないでしょうか。

具体的には、「right」と「light」が言えますか?的な話に出てくる、このrhoticの「r」音と「l」音の違いがありますし、「water」「better」で見られる「t」音の「d」音化があります。英語学習者の耳タコになっている「th」「v」など、他にも日本人が持っていない英語独特の音はたくさんあります。

しかし裏を返せば、「このように特徴的な音さえなんとかしてしまえば、そこそこアメリカ英語に聞こえるのではないか」というのが私の考えです。

際、私自身はアメリカでの生活をしたことがありませんし、この60年近い人生の中で外国での滞在日数はせいぜい下駄をはかせたとしても100日もない程度ですが、そんな私でも、そこそこ練習に励んできたおかげで、少なくともアメリカの都市部でネイティブの方々と話す際に、「今なんて言いました?」などと問い返されることはなくなりました。

そもそも私くらいの訛りなら、生まれも育ちもアメリカ人の中にもいるわけですので(親御さんや属するコミュニティの発音体系に大いに影響を受けます)、気にならないようです。私が頑張ってそれらしく話そうとすると、こちらのリスニング力などお構いなしに、早口でまくしたてたりして、困ることもしばしばです。なんなら、お店の店員さんの方が私より強烈に訛っているといった場面に出くわした経験も少なくありません。みなさんもそんな経験ありませんか?

 

マイケル・ジャクソンの「Thriller」って言えますか?

とはいえ、外国語ですから、克服が難しいポイントはあります。

たとえば、マイケル・ジャクソン最大のヒット曲のひとつに「Thriller」がありますが、このたった2つのシラブルからなるこの言葉ひとつで、私たち日本人の苦手な音の3大要素が含まれています。

なので私は、帰国子女の方々にお会いすると、「私の英語の勉強に役立てたいので本場の発音で是非」などとお願いして発音してもらいます。実際、彼らの発音を聞くと、毎回舌を巻くことになるわけです。

「早口言葉」のことを英語で「tongue twister」と言いますが、実際日本語では一部の音を除けばほとんど舌を使わなくてもしっかり発音できる言葉なので、英語を使う際には舌を動かすための筋肉を鍛える必要があります。早口言葉のことを「tongue twister」というと知ったときには、な~るほど、とうなったものです。

 

誰でも小林克也さんになれる!?

話が横道に逸れましたが、要するに何が言いたいかというと、「thriller」のような困難なポイントは英語にはあることは確かです。

しかし、その点はイギリス語でもアメリカ英語でも変わらないので、そういうクリティカルなところ以外で考えれば、アメリカ英語はイギリス英語に比べて相対的に簡単なのではないでしょうか、ということです。簡単が言いすぎだとしても、イギリス英語はアメリカ英語と同程度には難しいのではないでしょうか、ということです。

とはいえ、アメリカ人のネイティブスピーカーの発音と、そのような「上手な英語話者」の日本人の英語を、私自身の耳が聞き分けられていないだけなのでは?という可能性も疑っており、自分でも自信がないので、こういう考えについて、おいそれと人様には言ったことがありませんでした。

 

しかし、私のひそかな主張にもいくつか相応の根拠はあります。

まず1点目が、アメリカ英語では、地域別の訛りは相対的に強くない、という話です。

画一的とまでは言いませんが、アメリカ英語は、そもそも国の成り立ちからして色んな外国からの人が多く移住してきて出来上がってきた歴史があるので、論理必然的に、『話しやすい』『聞き取りやすい』音になっているのではないか、という理屈です。

アメリカ英語は、東西南北で「まったく何言ってるか聞き取れない」なんていうほど強烈な方言はないと聞きました。なんとなく、西の方の人でしょ?とかニューヨーカーだよね?ぐらいの感じのようです。

日本のTV番組などでは、地方の高齢者の方々が方言で話しているシーンでは、今でもテロップが入ります。しかしアメリカのTV番組では、少なくともネイティブの方のお話であれば、特段の理由がない限り、テロップをのっけているところを見たことがありません。老若男女・東西南北を問わずそうなのですから、みなさんお互いに聞き取れる程度しか差がない、ということですよね。

たまに、南部など相対的に特徴があるアクセントをネタにして話している番組を見ることがありますが、日本人の私からすれば、とりあえず聞き取れてるから笑いになってるってことは、裏を返せば、そんなにアクセント間に大きな差がないってことですよね、と思うわけです。

『きれい』なイギリス語を話すのは、イギリス人のたった3%

2点目としてあげられるのが、他方のイギリス英語の強烈な多様性です。

「イギリス英語は『きれい』なので」とおっしゃるような方々が想定しているような、いわゆるRP(Recieved Pronounciation)を使う方は、全人口のたった3~4%だと言われています。大ヒットドラマ「Downton Abbey」を見ればよくわかりますが、雇う方が雇われる方よりも人数が圧倒的に少ないですよね。そういう社会構造的な事実から推察しても、この数字には信ぴょう性が感じられます。

そしてその他9割以上の方々は、あんなに狭い島国なのにもかかわらず、実に多様な方言で話すと言われています。言語学者に言わせると50~60通りの方言があるらしいです。

その点は、日本の方言状況ととても似ていると思います。たとえば青森のおばあさんと鹿児島のおじいさんが、各自の方言で話しをはじめても会話が成立しないであろうことは日本人ならみな認めるところでしょう。

ちなみに私たちが外国人に日本語を教える際に大抵の場合「標準語」を教えますが、この「標準語」は、明治中期ごろから東京の山の手の教養層が使っていた言葉を土台にして形成されたといわれています。この辺りの「中心と周辺論」的な構造もイギリス英語と日本語でよく似ているように思えます。

 

Michael McIntyreというロンドン出身のイギリスのコメディアンがイギリス英語方言モノマネのエキスパートの1人らしく、実際に2本ほど聞いてみるだけで、その多様性の高さに驚かされます。

 

“Michel McIntyre on accents”(3:02)

 

私の友人の1人がYorkshire出身なので、お願いしてお国訛りを披露してもらったことがありますが、下のMcIntreさんのバージョンは、もちろん誇張されてますが、本当に「訛り」がすごくてびっくりしました。

“michael mcintyre yorkshire accents” (2:01)

 

というわけで、「イギリス英語の方が簡単です」と言う場合に、そもそもの前提としてほんのごく少数の方が使っているアクセントをイギリス語として考えてよいのか、という問題がそこにはあります。そういう意味で、はRPを『きれい』だする表現自体、私としては抵抗感があります。

そして3点目としては、「そういう面倒くさい話じゃなくて、いわゆるクイーンズイングリッシュが簡単だっていうことですよ」という方も多いでしょうから、「RPでもアメリカ英語よりも簡単ではないのでは?」というお話になるのですが、続きは次の投稿で。

 

英語学習については、高額なスクールに通う前に、かなり計画的に学習誘導してくれるような、自学ツールでコツコツやるのも一つの手ではないでしょうか。 ちなみに、うちの中一の娘はこれで英語頑張ってます。

 

 

 








Posted by yaozo