Netflix「After Life」で学ぶイギリス英語 その11(一旦最終回)

イギリス英語

yaozoです。

Netflixの人気オリジナルドラマ「After Life」で楽しくイギリス英語を勉強しましょうというシリーズ企画の第11回です。素材のエピソードはs1の最終回であるe6なので、一旦は今回で締めくくりとなります。

紹介が遅くなりましたが、このシリーズではいつも、英語ドラマのスクリプトが無料で読めるサイト「Springfield! Springfield! 」を使って、セリフを確認しています。

最新のドラマから懐かしいものまで、映画もTVも豊富なナインナップで、大変助かります。

https://www.springfieldspringfield.co.uk/

下のリンクが、『After Life』のシーズン1のページです。

https://www.springfieldspringfield.co.uk/episode_scripts.php?tv-show=after-life-2019&season=1

 

それでは早速『After Life』を見ていきましょう。

 

get sb through

 

職場でTonyのもとに、広告担当の女性Kathが近づいてきて、いつものように議論をふっかけます。今日は、彼が無神論者で来世のことも信じていない点について、難癖をつけてきます。

「(あなたは死後の世界を信じないと言うけど)死がすべての終わりだというなら、生きてることになんの意味があるの」と責め立てるKathですが、今日のTonyはいつものように、信心深いKathを理屈詰めでコテンパンにするのではなく、

「何言ってるんだ。命はいつか終わるからこそ、生きている瞬間に価値があるんじゃないか。君だって、なんか好きなものが何かあるだろ。それを楽しむんだ。君は何が好き?」と問います。

「Kevin Hart(アメリカのコメディアン)が好き。彼のユーモアとか映画とか。『Ride along2』は5回見たわよ」とKath。

それを聞いてTonyは言います。

 

Whatever gets you through.

好きなものならなんだっていいよ。

 

「get sb through」で調べると、Cambridgeで以下の説明が見つかりました。

他の辞書にはイディオムとして見当たりませんでした。

 

to deal with a difficult or unpleasant experience, or to help someone do this.

つまり困難な経験をなんとかやり抜くことや、それをやり抜く人を助けること

 

上のセリフでは、「through」の後に来るべき目的語が抜けてますが文脈的に考えて「your life」でしょう。

日本語字幕では、以下の訳があてられています。

 

なによりだ

Whatever gets you through.

 

直訳なら「君の人生をなんとか頑張って生き抜く助けになるものならなんでもいいじゃん」ということになりますね。

 

このイディオムで私たちの世代でまず思い浮かぶのはジョン・レノンがエルトン・ジョンとデュエットで歌ったヒット曲「Whatever gets you thru the night(邦題『真夜中を突っ走れ』)」です。

 

 

この曲はAメロが3番まであるのですが、終始具体的なことは何も言っておらず、タイトルの「なにをやってもかまないんだぜ」というメッセージのみ主張する、やけっぱちのロックンロールソングです。

原題の「night」は、2番、3番では各々「life」「light」と韻を踏んで変形されますが、とにかく全編思いつきといっていいような歌詞で、ノリだけで数分で仕上げた、といった感じの曲です。

1974年の冬に全米No.1に輝き、エルトンとのかねてからの約束通り(全米No.1になったら、エルトンのコンサートにゲストで出てもらう)、彼のマディスン・スクウェア・ガーデンのコンサートに飛び入りして、この曲を含む3曲を歌います。

この頃は、ジョンの「失われた週末」と言われる期間で、ヨーコに追い出されて西海岸で悪い仲間と傷心の中、飲んだくれて酒場で事件を起こしたりしていました。そんな時期でも天才とは大したもので、久しぶりの全米No.1ヒットを飛ばしたりするわけです。

そして、そのコンサートを見に来ていたヨーコと久しぶりに再会し、仲直りしてまた二人で(彼が凶弾に倒れるまで)暮らすことになるのです。

R.I.P, John.

 

a do

新聞配達人で、麻薬中毒者のJulianがなくなってしまいます。ほとんど知り合いもいないので、葬式らしい葬式はしなかったのですが、Tonyが葬式終了直後に、なんとか葬儀場にかけつけました。「知り合いだ」と告げると、葬儀社の方から伝えられます。

 

Wasn’t much of a do.

あまり大した式じゃなかったよ。

 

不定冠詞の「a」がついていますから、当然可算名詞だとは思いましたが、英語学習者にとって、最も動詞らしい動詞の1つである「do」に名詞形がある、というのも随分トリッキーだなぁ、と思いました。

Collinsでは、下のように説明されています。

 

A do is a party, dinner party, or other social event.

[mainly British, informal]

 

ということなので、主にイギリス英語で使われており、パーティやコミュニティイベント全般を指すインフォーマルな言葉のようです。こんな簡単な単語の新たな用法を還暦近くで知ることになるなんて。いくつになっても勉強ですね。



 

love

イギリス英語では、よく知らない他人のことも「love」などと気軽に呼ぶ、というのはよく聞く話です。

年上のおばさんが若い男女にいう感じの言葉かなぁ、などと勝手に想像していたのですが、Julianの葬式会場から出てきた60過ぎのシスターに対して、Tonyが「love」と声を掛けます。

 

Oh, don’t breathe in the smoke, love.

ねぇ、煙吸っちゃだめだよ。

You’ll be off your tits

ハイになっちゃうから。

 

一回り以上も年上の、しかも聖職者に「love」っていうんですから、かなり一般的な表現であることがわかります。

もしかしたら、一般的には年上のシスターには使わないところを、Tonyのキャラクターを表現するためにあえて使っている可能性もないことはありませんが、まぁ、その次のフレーズがオチですから、オチの前にオチを重ねることもないと思いますので、一般的な表現だと推察します。

 

off sb’s tits

全く聞きなれないこのイディオムについて、Wiktionaryでは、以下のように説明されています。

idiomatic, slang)Heavily intoxicated; under the influence of alcohol or drugs.

 

Julianは火葬に伏されているようで、葬儀場の煙突から煙が舞い上がっています。彼が麻薬中毒者だったので、煙を吸ってしまうとハイになってしまう、というジョークなのですが、このように精神が特殊な状態になっていることを指すスラングはたくさんあるようです。

有名なところでは、The Beatlesの『Sgt. Peppers’ Lonely Hearts Club Band』の最終曲『A Day in the life』の中でJohn Lennonが歌う、「I‘d love to turn you on」があげられます。この歌詞のおかげで、当時この曲はBBCでは放送禁止になったとのこと。

後日編集されたこの曲のプロモーションビデオを見ると、BBCが放送禁止にした理由も推察されます。

このアルバムの制作時、4人はプロデュ―サーのGeorge Martinに隠れてトイレでweedを吸いながら、夜中までAbbey Road Studioを借り切ってアルバム制作をしており、バンドとして色んな意味で最もハイな時期でした。

 

I’m getting there

物語も終盤になって、Anneとの語らい、Mattのやさしさ、Julianの死など色々あって、Tonyは「世界中に罰を与える正真正銘の嫌な奴」でもなくなってきています。

これまでは。老人ホームで父親の面倒を見てくれているEmmaに、会う度に憎まれ口を叩いていましたが、いまや彼女をデートに誘うまでに変心します。Yesの返事をもらった時、「ありがとう」そして「ごめんね」というTony。

驚いたEmmaとTonyの会話が、シーズン1の最後のセリフとなります。

You are human.

あなたもフツウの人間ね。

I’m getting there.

あと一歩でね。

「get there」は元来「arrive」の意味で、どこかに到着することという意味ですが、意味変化して下のような意味でも使われるようになりました。

Wiktionary

(idiomatic) To succeed after a lengthy attempt.

 

これを「getting there」とすることで、その道の途中にあることが表現されており、まさにシリーズ1最後のTonyの心境にぴったりの意味合いです。

 

さて、1本30分のドラマ6本、計3時間の1シリーズで、イントロ含めてブログを12本書きました。少なくとも、シーズン1で使われる言葉はすべて私は理解できました。私自身、このようにドラマ1シーズン分をまるまる使って英語学習したのがはじめてだったので、大変勉強になりました。

ブログを書くためのネタとしてじっくり見ることで、普段ならちゃんと調べずになんとなくわかったつもりで見過ごしてきた単語も、しっかりと調べるとなかなか勉強になるなぁ、と実感した次第です。

ネタばれコンテンツなのでどれだけの方の役に立つものかわかりませんが、何かひとつでも面白いとおもっていただける発見があれば幸いです。

 

はやくシーズン2が見たいなぁ、と思う今日この頃です。

他のRickey Gervais出演作品も見てみようと思います。『The Office』のボックスセットを見返すのもいいかなとも思いました。

また別のイギリス英語ドラマで、イギリス英語を掘り下げる企画をやってみたいと思います。楽しいです。

ではまずはシーズン1はおしまいです。

 

おまけ:イギリス英語学習について

英語学習については、高額なスクールに通う前に、かなり計画的に学習誘導してくれるような、自学ツールでコツコツやるのも一つの手ではないでしょうか。 ちなみに、うちの中一の娘はこれで英語頑張ってます。

 

また、イギリス人が普段の生活で話している英語を実際に「手加減なし」で聴き取って理解したい、という方には、「生のイギリス英語を現地の生録音」を使ってしっかりと「精聴」しよう、というコンセプトで作られている↓の2冊がおすすめです。

小川直樹さんと川合良平さんというに2人による、どちらかというと文化人類学的なフィールドワーク的アプローチの「現地語採取」に近い感じで、今のイギリス英語(話し言葉)を記録し、それを文字に起こし、そして解説する、という極めて面白い企画です。

まぁ、もちろん一発目は、音声だけ聞いて自分がどれくらい聴き取れるかやってみるんですが、インタビュアーがペラペラなので、対象のイギリス人もそりゃもう普通に、言葉につまったり、省略したり、訛ったりして、全く普段通りに話してくるので、わからない箇所が多いです。それを、しっかり聴き取れるプロが、文字に起こしてくれてるわけなので、「へ~なるほど、そうやっていってるのか。わかんなかったよ」というAHA体験が味わえます。

私にとっては、大変貴重なイギリス語学習の教材です。

RedとBlueがあります。



 

また、私も大好きな「シャーロック(カンバーバッチ版)」でイギリス英語にしびれた、という人も多いと思うのですが、ファンの方にもそうでない方にも、マンガでバイリンガルでシャーロックのシーズン1の3作を再現してくれている↓の3冊が超お勧めです。

大昔、ピーナッツ(スヌーピー)のバイリンガルマンガが好きで一所懸命読んで勉強したことを思い出す。

今考えると、子供用とはいえ、学校では習わない結構難しい表現が多くて苦労しました。というより、子供用だからこそ、我々が学校で習わないような「生っぽい」英語が多いので、知らない表現が多かったですね。

とにかくマンガで勉強というのは、現代の学習方法としては最も優れたものの1つですからね。

気になったセリフ回しがあって、対訳だけでは物足りない方は、そこだけネットサーフィンして徹底的に深堀りすると言った学習方法も楽しいですね。私は結構やりました。発見が多いですよ。

個人的には、「シャーロック」はシーズン1が最高の出来栄えだと思っているので、この3作だけでいいのではないかと思います。あくまで、個人的にはですが。

寝ころびながらのイギリス英語学習、いかがでしょうかね。



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Posted by yaozo