今最も売れている英文法書 時吉秀弥さんの『英文法の鬼100則』は本当にすごかった!
yaozoです。
もう齢60にもなろうかという私ですが、まだまだ英語の勉強は頑張ってます。
英検1級にも合格したし、TOEICも975点まで獲得(詳しくはこのページで)したのですが、実際、映画やドラマの英語は英語/日本語の字幕をみないと半分くらいわかりませんし、英語ネイティブとの会議では聞き取れなくて、聞き返すことも少なくありません。
なので、日夜、英語勉強にはげむわけです。
私のように、英語圏への留学や生活経験がなくても英語に必死に取り組んで、かなりなケイパビリティを獲得している人は、最近増えているように思います。
前から一定数存在したが、最近のSNSプラットフォームのおかげでそういう人にリーチしやすくなったのもありますが、やはりネットの発達のおかげで、簡単にWEB会議システムで英会話オンラインレッスンができたりといった環境変化も手助けしているように思います。
また、今日紹介するような「英語本の進化」もその大きな要因となっているのではないでしょうか。
中でも、このブログでも紹介している大西泰斗先生や、関正生先生、堀田隆一先生など、日本の英語教育におけるマイルストーンとなった方々の貢献は大きいと思います。
英語教育界の新星 時吉秀弥(ときよしひでや)先生
最近一躍注目を集めている方の一人に、時吉秀弥先生がいます。
私は、息子に頼まれていた『鬼滅の刃』の最新刊を買うために近くの書店に行って、ルーティン的に英語本のコーナーに立ち寄った際に、見つけて買いました。
もとより、英語の学習において「英文法」をしっかりと勉強することの意義についてはよくわかっているつもりですし、そもそも英文法関連の本を読むこと自体、それほど嫌いではありませんので、主だったものは手に入れて読んでいます。
書き手によって、やはりどなたの本も、新たな発見や切り口が見つかるもので、こういうものは数をたくさん読むのが大事だなぁ、と感じています。
ということで、タイトルの『英文法の鬼100則』というタイトルに惹かれたのか、たまたま『鬼滅の刃』の最新刊を手に持っていたからなのかは定かではありませんが、この本も著者のこともなにも知らずに、「とりあえず買っとこう」ぐらいの気持ちで手にして、お会計をすませました。
その後、積ん読(つんどく)してあった英語本もいくつかあったので、すぐにはこの本が読めず、何か月かが経ちました。
で、積ん読リストも消化してきたところだったので、思い出して本書を手に冒頭から読み始めました。
タイトルがちょっとミスマッチ? タイトル変えればもっと売れるかも
そもそも積ん読リストの最後尾に本書がおかれていた理由はそのタイトルにありました。
「鬼100則」という言葉は、ちょっとスパルタ感があって、ややもすると元気がないときなどは敬遠しがちになります。少なくとも私の場合そうでした。
帯を見ると「丸暗記、禁止。」とあります。
とにかく、英文法の本というのは、従来「これはこうです。ネイティブの感覚ではこうなっています(だから、つべこべいわずそのように覚えなさい」的なアプローチの本が一般的なので、そこに加えて「鬼100則」とくると、ちょっと腰が引けてしまいます。
とはいえ、「丸暗記、禁止。」のコピーから推察される筆者のスタンスに惹かれ、おっとり刀で本書を読み進めると、これがなんとも、目からうろこの内容が、冒頭から矢継ぎ早に繰り出されてきます。
冒頭、日本語ネイティブの世界観と英語ネイティブの世界観との違いの説明から入ります。
道に迷った際に、日本語ネイティブなら日本語で「ここはどこ?」と言います。これを英語に直訳すれば「Where is here?」となります。
しかし、みなさんご存じのように、英語ネイティブは「Where am I?」と言いますね。
それ自体は広く知られているとは思いますが、この「表現の違い」がどのような「世界観の違い」に立脚しているかを、どれだけうまく説明できるかが、文法書の出来不出来に大きくかかわってくるわけです。
時吉先生は
日本語:自分がカメラになって外の風景を映す言語
英語:外から、もう一人の自分が自分を眺める言語
と説明しています。
つまり、日本語の場合、映像表現でいうなら「一人称視点」だということです。だから、「私がどこにいるか?」ではなくて、「(私が見ている)ここはどこだ?」という表現になるわけです。これは、日本語から主語が脱落しやすい傾向の説明にもなっています。常に、主役のカメラ越しに世界が見えている前提なので、「私は、この花が好きです」という必要がなく「この花、好きです」でOKなわけです。
一方の英語の世界観は、「第三者視点」というか、「神の視点」というか、自分も含めた世界全体を俯瞰で見ている世界観だというのです。
よって、私込みのこの現実「私が存在している場所が私にはわからない。私はどこにいるのか?」と表現するわけです。『地図上にいる自分を眺めている感覚です』と表現されています。
その後スムーズな流れで、例の5文型についての解説へと続きます。
5文型については、本当に難しく、諸説展開されており、著者それぞれの考え方、英語感というものが一番見えるところです。
時吉先生の5文型解説は、どの文型にも必須の「動詞の説明」から構築されています。
詳しくは「ネタバレ」にもなりそうなので、触れませんが、私にとってはまず文型の説明で、「この文法書は面白い」と思わせてくれるに十分なスタートダッシュでした。
続いて時制。
『人間は「時間」を「場所」として理解している』
から始まる彼の世界観は、しっかりとついていけば、非常に納得感の高いものです。
そして、現在分詞、過去分詞、動詞の原形、仮定法、と続きます。
どれも面白い。眠くならない(笑)。
そして、私が一番膝を打ったのは、助動詞のパートです。
特に『willは心の働きだ』であり、『未来を表すこともある助動詞』である、という名文句からはじまり、具体的に「willとbe going to」の違いあたりは、きわめて納得感が高いページでした。
また「mustとhave to」の違いも極めて明瞭。このあたりも、英語を頑張って勉強している人の中でも、わかっているようで、なかなかスッキリと説明できないようなパートです。
私は、この本を読んで、特に助動詞についてとても考えさせられましたね。
同じようなことを書いている方もいらっしゃいますが、この時吉先生の語り口、説明の順序、が秀逸なせいか、とにかく納得感が高い解釈・説明で教えてもらえます。
発行後1年経っても、Amazon第1位!
私はこの本を書店で見つけて買ったので、知りませんでしたが、読み終わってから、時吉先生のことをGoogleやYouTubeなどで検索すると、出版直後の2019年12月投稿の動画で、英語・文法書部門で第1位だと言われていました。
こりゃ売れるわけだわ、と納得しながらも、「では発行後約1年経った現在は何位だ?」と確認してみました。
なんと、英文法・語法辞典の部門で、今でも1位。
英語教授法の部門でも2位、といまだに売れまくっているようです。
本人も語っていますが、時吉先生のブログを読んで興味を持った、とある出版社の方からは、いざ具体的な内容の打ち合わせに入ると「文法書は売れない」ので、、、、と敬遠された、とのこと。そもそもカテゴリーとしてそれほど売れる分野ではないのというのもありますが、そんな中で、これだけの魅力的なコンテンツであれば、ぶっちぎりの1位になれる、ということですね。
今後数年は、これを超える文法書のベストセラーはでないんじゃないか、と思われます。
吉本出身で予備校講師出身?
上の動画が、時吉先生の人となりが一番わかりやすい動画のようです。これを見れば、時吉先生の大体のことがわかります。
・まずは、関西で落語家になりたくて、某師匠に弟子入りした。
・弟子入りするも、大失態を犯し破門に。
・上京してお笑い芸人として下積みを経験。
・昼は、予備校で英語講師。
・で現在は、時短型英語ジム「StudyHacker ENGLISH COMPANY」のコンテンツ開発室シニアリサーチャー。
どうりで、書籍の構成が極めてナチュラルで、読みやすく、理解しやすい仕立てになっているんですね。
というのも、落語、芸人、といった職業は、ある所定の時間内でストーリーを語るプロなわけですので、そこで「起承転結」を設けて、聞き手の心を常に惹きつけて、最後のカタルシスまでもっていく「ストーリーテラーのプロ」ということです。
もちろん、芸人としては成功しなかったので、現在の英語教授者になっているわけですが、そこで鍛えられたベーシックな能力というものが、本書執筆において役に立っているのではないか?というのが私の見立てです。
文法書なので、ある程度難しい概念や用語を使わずに説明するのは無理ですが、かといってそこに甘えて、専門用語で、なんとなく「これはこうです」で押し切られると、読み手は飽きてしまいますし、結局本質的なところにタッチしていない感じが最後までつきまといます。
その点、時吉先生の語り口は、ちゃんとした認知言語学のアカデミズムのフレームワークにのっとりながら、たとえ話、構成、話法、といったテクニックを駆使し、きわめて納得感の高い、「かゆいところに手が届く文法書」を上梓してくれました。
もっと早く読めばよかった、と少し後悔しましたが、タイトルの「鬼100則」が、元来がなまけものの私にはややハードルを実際より高く見せていたようです。
タイトルにもう少し、工夫があればもっと手に取る人が増えるのではないかと思いますが、私は筆者でも編集者でもありませんので、そこは仕方ありません。
でも、まじで惜しい。「鬼100則」と言われて、手を止めた人は少なくないのではないでしょうか?
ともあれ、近年の英語関連書の中でも、ハードコアな内容でありながら、かなり読みやすく、ハイブラウなところまで連れて行ってくれた名著だと言えるでしょう。
すばらしい。
英文法が苦手な方ほど、是非手に取ってみて下さい。
ご本人のおすすめのパートは2点。
私が、上であげた「willとbe going to」が1つ。
そして、可算名詞、不可算名詞の違いが1つ。
これは、日本語ネイティブと英語ネイティブの世界観の違いがわからないとわかない典型的な部分ですね。
どのパートも、決して「鬼」的要素はみじんもありませんので、是非どうど。
追伸:続刊超ハイスピードで続々刊行!!
上のような感じで、感激してブログ投稿してツイートしたところ、なんと時吉先生ご本人からRTいただきました↓。
しかも、これ投稿当日に則リツイート。
こういうのは、今日的な意味での「筆まめ」というんでしょうかね。
で、この時に書かれていた「2冊目」というのが、↓の『英熟語の鬼100則』なんですね。
もちろんAmazonで即刻予約して、読ませていただきました。
いま、Amazonの注文履歴見たら、「2020年11月13日に配達しました」って書いてあります。先生のRTいただいてから、ほんの2週間後ですね。
帯の推薦文はなんとあの「パックン」なわけです。もういきなりスターダムじゃないですか。すごいなぁ。
で、一気読みしたのもつかのま、先生の「3冊目脱稿」のツイートを読ませていただき、RTさせていただいたところ、すかさずまたまたRTいただけました。
先生、ほんと筆まめですね。先生のツイッターをフォローさせていただいているのですが、ご著書に触れられたツイートにはどれも丁寧にRTされてます。まじめなお人柄が伝わってきますね。
2020年11月29日に脱稿ツイートされたその「3冊目」というのが、↓の『英文法の極意』です。
今度の帯の推薦文は、かの有名なTEX加藤先生。
たったの3冊で、もはや英語教育書界のティアワン入りした、といったところでしょうか。
ミュージシャンでいうなら、デビューから3枚連続シングルがNO.1ヒット飛ばしているような感じですね。
3冊目は、出版社も変わったこともあり、趣向を変えて、対話式で展開されます。
先生の英語動画の、あの感じで、肩ひじ張らずにリラックスした雰囲気の中、強烈な「AHA体験」が楽しめる、といった感じです。
中面のデザインやレイアウトは、1冊目、2冊目と出版社が違い、シリーズが違うので構成が全く違うこともありますが、個人的には、より一層楽しく読ませる工夫が施されており、好きですね。
脱稿のツイートを読んですぐにAmazonに予約を入れたのですが、購入履歴を見ると「2021年3月31日に配達しました」とあります。たまたま仕事が忙しくてまだ読了できてないのですが、ほんの1章読むだけで、この楽しくも深い学びが得られる内容が伝わってきます。
ちなみに、届いた日にツイートしたら、やっぱり先生はRTくれるんですねぇ。うれしいなぁ。
さぁ、早く時間作って最後まで読もっと。
ではまた。
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