Netflixで『Sherlock』のイギリス英語を完全制覇:その4

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yaozoです。

ベネディクト・カンバーバッチ版の『Sherlock』のシーズン1のエピソード1『ピンク色の研究』の読破企画、第4回。

興奮して一人で先に事件現場を後にしてどっかに行ってしまったシャーロックに取り残されたワトソン。ここでシャーロックの兄のマイクロフトから、はじめてアプローチされます。

 

Do you see it?

マイクロフトが実弟のシャーロックと接点を持つことになったワトソンにアプローチし、彼を見張って行動を逐一報告することを要求する、という一連のお話がここからスタートするわけです。

ロンドンは、英国政府とIRA(アイルランド共和軍)との戦いが長く続いたため、テロ防止用に随分早い時期から町じゅうにセキュリティカメラが取り付けられています。なので、ロンドンを舞台にした犯罪ドラマや映画では、刑事は必ず犯罪現場近くのセキュリティカメラの映像を見せろ、などといいます。

マイクロフトは、政府の実に高い高い役職についているので、町じゅうのセキュリティカメラに自由自在にアクセスできます。そして、事件現場を後にしたワトソンをずっと見張っており、ワトソンがタクシーを待って立っているそばの電話ボックスのベルを鳴らします。ベルの音に不思議に思いつつも、つい電話に出るワトソンに、マイクロフトが言います。

There is a security camera on the building to your left. Do you see it?

君の左手のビルに防犯カメラがあるが、見えるか?

(和訳はマンガ版から)

 

ここで問題にしたいのが、マイクロフトの質問「(カメラが)見えるか?」の表現です。

”Do you see it?”

であり、決して

Can you see it?

ではありません。

私はここのセリフをはじめて耳にしたとき、無機質というか、無感情というか、横柄というか、そんな感触を感じました。演じるゲイティスの冷徹なトーンも相まって、そこそこびっくりしました。

字幕では「見えるか?」と書いてますし、実際、見えるかどうか聞いているんだろうし、なぜ ”Can you see it?” じゃないんだ?

しかしそれがそうでもない、というのが今日のお話です。

 

現在形の用法は、「習慣」と「事実」?

現在形の用法は思ったより単純な話ではないようです。

たとえば、文法書なんかでは、「習慣」や「事実」を表す際に使うなどと説明されたりします。しかし試しに「現在形 用法」などとググってみると、十人十色で皆さん持論を展開しています。

日本人が「英語は話せますか?」を英語でいうときに、”Can you speak English?” と間違えがちだが、これは “Do you speak English?” であるという話があります。

これは現在形の「習慣」の用法の疑問形だという説明がされることが一般的です。「あなたは英語を話す習慣があるか?」と訊いている、という説明です。

 

また現在形には、「習慣」とは別に、「事実」の用法があるとして、”The sun rises every day.” などの「科学的な事実」を例文にあげる人が多いです。

なるほど。

 

加えて、「確定した未来の予定」の用法があるなどという人もいます。”The train takes off at 8 this morning.” みたいな例文があげられます。

 

しかし、「太陽が毎日昇る」というのと、「電車が8時に発車します」というのを、わざわざ分類して何かいいことがあるんでしょうか。

科学的な事実は確からしさが極めて高く、人が決めたルールは都合によって容易に変わりうる、という違いがあるので性格が異なるので分類すべきだ、といった理屈なんだとは思います。でも、太陽が昇らなくなることもないとは言えませんよね。ある日大きな彗星が想定外のスピードで飛んできて太陽にぶつかって、太陽系が姿を変えたりして。「科学的事実」と「確定した未来」は、確からしさの度合いの違いだけです。明日のことなんて誰も何もわかりませんよね。ほんとに。

それに、「習慣の用法」だなどと言われる、”Do you speak English?” にしても、考えようによっては、「あなたは英語を話すのか?(事実を教えてくれ)」と質問されて、それに対して、”Yes, I do. ” 「はい、私は英語を話します」 と、自分が知っている自分に関する事実を伝えている、と解釈することもできます。

 

なので結局のところ、現在形は多様なニュアンスに富んだ事実を表す用法だと考えた方が分かりやすいように思います。

 

さてこのように考えると、マイクロフトの質問、 “Do you see it?” は、「現在形の疑問文」なので、「事実について質問している」ということになります。

つまり「君は、それを見てるか?」と。ちょうど「君は英語を話す人か?」みたいな感じで。

しかし問題は、このように質問しているマイクロフトは、ワトソンにはそのカメラが見えることは予め分かっている点です。だって彼がそう仕組んだんですから。

ということは、マイクロフトは分かっている事実について、逆にそれが分かっていなかったワトソンに対して質問しているということになります。

質問されたワトソンも、相手が誰であれ、その相手は、電話ボックスに入ればカメラが見えることについて分かっていることは、(実際カメラが見えましたから)分かることになります。

カメラが見えた瞬間、ワトソンはそのことを知ります。

 

ちなみに、仮にマイクロフトが、ワトソンはカメラが見えてるかどうか分からないので、どっちなのか教えて欲しい、というのであれば、やはり “Can you see it?” と聞くでしょう。

もしそのような関係であれば、必然的に質問者の方が立場が弱くなります。なぜなら、真実を知っているのは質問されている(回答する)方のみであって、ここで「情報の非対称」が生じているからです。質問者はその情報に対して「弱者」の立場にあります。なので、質問ではありながらも、ある意味で懇願になります。頼んでいるわけです。できるかどうか、それを教えてくれと。

しかしこの場合、マイクロフトはワトソンにはカメラが見えることを分かっています。他方のワトソンはカメラを発見するまでは、分かっていないので、質問している方が情報に対して「弱者」であるという、おかしな「情報の非対称」が生じています。マイクロフトは、懇願して事実を教えてもらう必要がありません。逆に情報を与えている側です。

 

さて、そのような状況で、マイクロフトが、”Do you see it?” と質問します。

 

「私は、私が仕組んだから、その電話ボックスからセキュリティカメラが見えることは分かっているが、君はそのカメラをちゃんと見てるか?」と質問しているわけです。

 

立場としては一方的に質問している方が強い。

しかも、最初に「見えるか?」と質問されたワトソンが、それにこたえず「誰だ」などといっていると、畳みかけるように、「見えるか?」と繰り返します。「見えます」というまで繰り返すんでしょう、おそらく。

つまりこの「疑問文」によってマイクロフトは、何かを質問しているのではなく、「見えます、と言え」と、事実上の命令をしているわけですね。

ということは、この単純現在形の疑問文は、修辞疑問文(レトリカル・クエスチョン)だということになるわけです。あんまり微妙なので、わかりませんでした。

修辞疑問文については、↓の投稿に詳しく書いたので、ご興味があればぜひ。

「Do you have a name?」って?名前ぐらいあるにきまってるじゃん!

ではまた。

p.s.

英検1級やTOEICハイスコアに興味のある方は、私の↓のページもどうぞお読みください。できそうな気がしてくるかもしれませんよ。

 

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Posted by yaozo