SGでジャズ(A.K.A 一番わかりやすいSGジャズ入門)
yaozoです。
ギブソンというギターブランドには、たくさんの種類のギターがありますが、私はダントツでSGが好きです。
こんなギターですよ。
SGはロックでよく使われるギターなのですが、最近歌モノがすっかり苦手になってきた私としては、ではSGでジャズやインストを演奏している(いた)アーティストを調べてみましたのでシェアさせて頂きます。
※ちなみに、SGファン待望の専門書が出ました。
こりゃ買わなきゃですね。
ポチっと。
SGの概要
この投稿は、いきなり「SGって・・・」などと語りだされてもちょっと困るなぁ、と言う人向けに書いていますので、一応「SG」の説明を。
ですが、まずギブソンSGを語る前に、ギブソンのソリッド・ギター(ギターのボディーに中空がないもの、板状のものでできたギター)の最初の1本「レスポール」を語っておく必要があります。
レスポールは、人気ジャズギタリスト「レス・ポール氏」の名をいただいて(今でいうシグネチャーモデル)、1952年から長らく製造してきました。
特に、当時の奥様でボーカリスト兼ギタリストであるメアリー・フォードとのデュオがヒットしただけに、なおさらネクタイにスーツの真面目な中年白人男性が弾くギターというイメージが強化されたようです。
他方そのころ、バディ・ホリーが、ライバルであるフェンダーのストラトキャスターをかっこよく、「ジャカジャカと(レスポールのように短音ではなく)」弾きながら、『ザットル・ビー・ザ・デイ』『ワーズ・オブ・ラブ』そして『ペギー・スー』を1957年に、『メイビー・ベイビー』を1958年にと、例の「しゃっくり唱法」で立て続けに全米No.1ヒットを飛ばしています。
このように「ジャガジャガと和音をかき鳴らす(ストラムといいます)」奏法は、そのギターサウンドもレスポールとは極めて対象的であり、新しいロックの時代を感じさせるに余りあるものだったでしょう。
かのビートルズのレノンとマッカートニーも、ホリーにやられた若者で、かのビートルズ(カブトムシとbeatのもじり、ダブルミーニング)も、ホリーのクリケッツ(コオロギとスポーツのクリケット)にあやかってつけられたくらい。
「ホリーの曲は神聖過ぎてカバーできない」と実際にリリースしたレコードでカバーした曲は『ワーズ・オブ・ラブ』1曲です。
また、いまでは当たり前のようになっている、ギター2本(うち1本はボーカリスト)、ベース、ドラムス、という4ピースバンドは、このクリケッツが最初だと言われています。う~む。
このような、1950年代後半における、フェンダーとギブソンの市場関係を理解しておかないと、SGの存在がわかりませんので、ややしつこめにやっときました。
そうだ!レスポールを改造しよう
ギブソンはギター専門メーカーであり、他方のフェンダーは(フェンダーローズというキーボードに代表されるように)総合楽器メーカーです。
そんなギブソンが完全に劣勢に立たされたことから、この1952年にリリースしたこの主力エレキギターであるレスポールを時代にマッチすべく改造に踏み切ります。
ビッグバンドなんかで座って弾くことを想定していたこのギターは、比較的重いため、立って演奏し、動き回ることもあるロックンローラーたちにすこぶる評判が悪かったので、その重さを極力軽くしようとしました。
そのため、もともと、表面をメイプルを持ちて、アコースティックギターの時のシェイプを残すべく、美しいカーブを描く形にして、バックにはマホガニー材を使い、これをあわせてボディを作っていました。
改造版は、薄くしたマホガニー単板で、表面には、全く美し凹凸をなくし、ただの板(フェンダーテレキャスター同様)みたいにしました。
また、落ち着いた低域や複雑なコード進行のみならず、ハイノートでのリードプレイをしやすくすべく、ネックとボディの接合点を随分後ろの方にもってきて、SGに特徴的な「ネックの長い」ギターにしました。
このため、ネック側が重くなり、ストラップを使って立って持つと、ネック側が落ちてしまう「ネック落ち」という悪癖を生んでしまいます。
そして最後に、下の方だけ弾きやすいように削ってあった「シングルカッタウェイ」を、ハイフレットも弾きやすいように、上の方も切ってしまいました。それがあの「ダブルホーン(ダブルカッタウェイ)」と呼ばれる形状です。
クワガタかっ!
まぁ、大体こんな改造を施したギターは、もはやレスポールギターと呼ぶのもはばかられるのは、現代の私たちにも想像に難くありません。
シグネチャー契約をしていた、レス・ポール氏は「こんなクワガタみないなギターに私の名前を使うのは嫌だ」と言ったとされています。
※諸説あります。
クワガタ型がいやだったかどうかはさておき、レスポールギターの設計にも関わったポール氏にしてみると、自分の考える「エレクトリック・ギター」とは程遠い、見た目とサウンドであったことでしょう。
しかし、契約期間がまだ残っていたため、その「レスポール」とは似ても似つかぬギターは、「レスポール」として1961年から発売されます。
つまり、オリジナルのレスポールはこの時点で生産中止になるのです。というか、今でいうSGが「新型」レスポールだったわけです。
とはいえ、契約が1963年に切れましたので、正式にレスポールの名称を使えなくなったギブソンは、この「新型レスポール」に新たな名前を与える必要に迫られます。
そこで満を持して付けた名前が、「ソリッド・ギター」の略で「SG」ってことでいこう、というかなり安直なものでした。
なんか、「ダブル」でも「ツイン」でも、なんでもいいですけど、2つのホーンにちなんだ名前ぐらいいくらでも考えられたでしょうに、その辺は、そういった代案を押しのけて「SG」が選ばれたかどうかは定かではありません。デュオはすでにフェンダーがデュオ・ソニックで商標を持ってたはずです(1956年発売)。
また、よさげな名前が全部他のメーカーに抑えられていた可能性だってあります。
私は、めんどくさいシンプルでカッコイイから、という理由だと思っています。
とまぁ、そんな経緯を経て、この「新型レスポール」は「ギブソン・レスポール」から「ギブソンSG」となったわけです。
名前がSGになったところまでで、結構使っちゃいましたね。ま、名前は大事ですからね。
SGを使うジャズギタリスト
まずはなんとなく年の順にいきましょう。
ジョン・マクラフリンが、ネックが2本あって、1本が12弦、もう1本が6弦というダブルネックのSGを早くも使っています。
マハヴィシュヌ・オーケストラをやっていたころのようです。1972年のライブ映像が残っています。
12弦でアルペジオやコード、6弦でソロと、うまく使い分けています。
フランスのテレビ局の映像も、この新しいSGダブルネックが、画的においしいので、かなり意識して追っかけているのがわかります。
このツインギターは、ジミーペイジの専売特許の感がありますが、少なくともこのライブは1968年ということですので、ペイジはまだ、ジェフ・ベックにもらったテレキャスターを使っているころで、レスポールすら握っていないころです。
イーグルスのドン・フェルダーも、ギブソンSGのダブルネックを抱えて『ホテル・カリフォルニア』を演奏するシーンが印象に残っていますが、これも1970年代後半のことです。長いのでYouTube貼るのやめときます。
アラン・ホールズワース
次も、マクラフリン同様、イギリスが生んだ偉大なジャズギタリストのひとり、アラン・ホールズワースです。
テンペストというバンドに在籍していたガリガリのノッポさん時代、白のSGカスタムを弾き始めたようです。これがまたかっこいい。
その後、ドラマーのトニー・ウィリアムズのライフタイムというグループでギターを弾き舞う。
1975年発番の『Believe it』は、ホールズワースのファンならずとも必聴の名盤だと思います。とにかく全編かっこいい。
その後、同グループは1976年に『Million dollar legs』をリリースしますが、ここでもホールズワースがギターを弾いています。
また、未発表ながら、元クリームのベーシスト、ジャック・ブルースも参加した『Wild Life』という海賊版でもホールズワースのプレイが堪能できます。
切れが良く伸びもある、軽々としたライトなディストーションサウンドは、SGカスタムのものではないかと推察されます。
しかし、いくら指が長くて有名なギタリストだったにしても、このプレイはなんだか人間業を超えて聴こえます。
ギブソンSGの話でいうと、ソロデビュー作『ベルベット・ダークネス』にも映っているこのギブソンSGカスタム。ニューライフタイムに所属していたころ、マネージャーが勝手に売ってしまったとのこと。そんなことありますか。どういった事情だったのでしょう。SGファンとしては、これにめげずにその後もSGでガンガンプレイしてほしかった。
彼はその後、1つのギターにこだわることを捨て、様々なギターを試す放浪の旅に出るのです。当時最新鋭のシンセギターにも果敢に挑戦し、この世界を切り開きました。
最後はカーヴィンのヘッドレスタイプのシグネチャーモデルに落ち着いたようです。
オリー・ハルソール
次もまたまたイギリス出身のギタリスト。ここまで3人続くと、なにやらイギリス人ギタリストとギブソンSGの因縁めいたものを感じないでもありませんが。
マイク・パトゥとのアルバムや、テンペスト、ケヴィン・エアーズといったバンドに在籍した「ジャズ・プログレッシブ系ギタリスト」といったポジショニングかと思います。
歌モノのバンドでのキャリアが長いので、正直私自身はそこまで聞きこんではいませんが、「再考すべきギタリスト○人」といった企画にはたまに名前を見ます。
左利きだったこともあったのか、ギタープレイもユニークな感じがします。
もともとは、歌をやりたかったらしいですが、人生どんなふうに進んでいくか分かりませんね。
ビル・フレーゼル
ようやく、SGを弾くアメリカ人ジャズギタリストの登場です。
以前にフェンダーのテレキャスターでジャズを演奏するギタリストで紹介したビル・フレーゼルも、SGのjunior(P-90というピックアップがブリッジ1基のタイプ)を使って『酒とバラの日々』をソロで演奏しています。モノクロのクローズアップの画角もあいまって非常に内省的に響きますね。
今では彼はテレキャスター以外のギターを弾くイメージが全くわきませんが、まだ若いころは、色々なギターを手に自信の音楽を追求したのではないでしょうか。
同じSG Junior w/P-90を、今度はバンドで演奏しています。
1988年9月3日の演奏らしいです。
例の内省的なサウンドで、キラキラした弦を聞かせてくるルカと思えば、途中一変して、珍しくボトルネックを使ったりして、かなり情熱的なプレイを披露しています。
ジョン・アバークロンビー
さて、最後は、ジョン・アバークロンビーです、などと書くと、なにやら冗談にみえてきますが、実際に彼もSGをプレイしています。
イギリスのレインボーシアターでのプレイ。主役のドラムス、ビリー・コブハムに照明を全部奪われているので、ちょっと見にくいけど、ピックアップやネックの特徴からすると、SGスペシャルに見えます。
アバークロンビーというと、私のように、にわかジャズファンにとっては、大ベテランになってからの映像や写真しか知りませんので、長い口髭をはやし、高級そうなオリジナルギターやら、ギターシンセなどを使っているイメージしかありませんが、実際に若いころは、SGぐらい弾いてましたね。
ま、といっても、ジョン・アバークロンビーが特別SGを愛したギタリストというわけではないでしょう。
どちらかというと、「SGをプレイする姿が目撃されている、レアなジャズギタリストの1人」みたいな感じです。
ここまでくると、無理やりな感じもありますが、とにかく私が言いたいのは、どうしても「ロック」しかもガーンとコード一発みたいなストレートロックでしか使われない、というような強固な既成概念がある、大好きなこのSGは、ジャズであろうと、ルンバであろうと、カントリーであろうと、使ったって全く問題ないギターなのではないでしょうか、というギタープレイヤーたちへの問いかけなのです。
マイク・オールドフィールド(おまけ)
ジャズと言うには無理があるのでおまけですが、マイク・オールドフィールドも、デビュー当初、ビル・フリーゼルと同じSG Junior w/P-90をプレイしていました。
こちらは、P-90をかなりオーバードライブさせて、随分気持ちいいサウンドを聴かせてくれます。『チューブラーベルズ』のモントルーでの1981年のライブ。
私が最も好きなSGのサウンドがこの時の彼のこの音です。
ワイルドでいながら、陰影に富み、可愛さもあって、キュんとくるサウンドです。
私が、何本ものSGを買ってきて、最後の1本に残しているのは、SG Goddess。
中古をオークションで落札したので、10万円未満だったかとおもいますが、エボニー指板の感触が気に入っているのと、このどう見ても素っ裸感満点のピックアップから出るワイルドでニュアンスに富むサウンドがたまりません。
これまでにもっと値の張るSGを買っては売りを繰り返してきましたが、まぁ、自分にとって良いギターというのは、値段が高ければよいと言わけではないという好例だと思います。
名前から察せられるように、女性プレイヤーをターゲットに、2006-2007あたりに限定的に製造・販売したものとのこと。あまり市場に出回っていないので、一度手放すとなかなか次が出てこないと思います。
スタンダードよりボディーも小さく、ネックも薄いラインナップです。ただでさえ、軽くて薄いSGの中でも特にその特徴が際立っている点も、手放せない一因かしれません。
とはいえ、結局この原稿書いているうちに、何度かマイク・オールドフィールドのプレイを見ているうちに、あまりにSG Juniorが欲しくなり、ギター断捨離中なのにもかかわらず、注文してしまいました。明日着荷予定です。家族にはちゃんと説明しなきゃなりません。
当然、別のギターを売りに出す必要があります。そのギターも、一度買ってからなんとなく肌になじめないなぁ、と思い売ってしまった後、数年経ってから諦めきれずに、探しまくって(生産終了品なので中古の出待ちをするしかありませんでした)やっと見つけたものです。
もう諦めはついているので、写真をとったり、オークションにかけたりしなければなりません。やれやれ、1970年代後半のイギリスの貴族の次男に生まれていればなぁ。
この投稿を読んでもしSGが欲しくなったら、とにかくは↓のようなラインを1本買ってみると良いと思います。まぁ、大概はSGファンになってもらえると思います。
ギターをネットで買うのを嫌がる人もいるかもしらませんが、日本の丁寧な方々のみならず、海外の個人やショップと200本以上、ギターをやりとりしてきた経験から言いますと、ちゃんとした楽器店が仕入れた大量生産の商材なので、掃除機とまではいきませんが、パソコンを買うぐらいの感覚で、標準化されてますので、全く心配いりません。
どうぞ是非試してみて下さい。
※楽器店のネットショッピングでポチっとしたギター、届きました。
すばらしいSG。すばらしいP-90のサウンド。
RollyのYouTubeのコンテンツを見てたら、彼がやはり同じSG Jrと、もうP-90を2基積んだ、SG standardのどちらもビンテージモノを弾き比べしていました。
Rollyさんは、断然、P-90を1基しか積んでいないSG Jrのサウンドの方が気に入ったとのことです。私もYouTubeを通してですが、どうみてもJrのサウンドの方が良いと思いました。
店員さんいわく、「1基しか積んでない分、ダイレクトなんでしょうね」とのこと。つまり、2基積んでるとその分、VolやらTnやらの回路が複雑になるわけですからやはり、その分ピックアップに対しては邪魔なものになるのでは、ということかと思いました。
なんとなくわかるような気がします。
Goddessも1ボリューム、1トーンでシンプルな分、2ボリューム、2トーンのSGと比べて、複雑なセッティングができませんが、3つのセレクトどれも、シンプルにいい音がします。
ともあれ↓が実際にとどいたSG Jr!
スモールトレモロつきなのですが、ブリッジ直に弦を張り直しました。その方が、よりダイレクトになると思いますんで。
いやぁ、P-90のサウンド、いいですねぇ。そして、SGなので当然カワイイ。あぁ、買ってよかった。
新品がいい、という人は大体こんな価格帯で、ぴかぴかの最良個体が出に入ります。
選択肢に入れて見てはいかがでしょうか。
すばらしいですよ、P-90の図太いシングルトーン。
結局現在は、P-90が2発乗ったSGを愛用
などといろいとありましたが、現在は、フロントのP-90の音もいいなぁ、と思い、P-90が2発のSGのオーナーとなっています。
e-bayで10万円くらいで購入しました。
まじかで見ると、ボディに打痕などもあったりしますが、私はそういうのまったく気にしない方なので、全くカッコイイとしか思えません。斜めからのカットがまたカッコイイですね。
ピックガードはラージですが、これも特に気にしません。
とても満足しています。
他にもP-90の乗ったギターを持っていますが、このP-90は特にフロントの音がとても甘くてふくよかでかつラウドなので、大変気に入っています。
私は大体の場合、なんらかのエフェクターを通してしかギターを弾きませんが、このフロントの音だけはまるっきりのクリーンサウンドのほうが好きで、これを持つときは、ノーエフェクトで弾くことが多いです。
素晴らしいギター。
↓これはペルハム・ブルーの2019年製。
このブルー意外と人気あるみたいですね。
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