気になる「ain’t」。 日本で一番詳しく解説!

英語学習

海外ドラマを見ていると、よく「ain’t」というフレーズを耳にします。

皆さんも一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

前々から気になりつつも、まぁ、大体の意味は分かっていたので詳しく調べたことがありませんでした。

まずはググってみましたが、どのページも、あっさりと概要について触れる程度だったので、Wikipewdia英語版を柱にしてできる限りを調べてみました。「ain’t」について読める日本語のページとしては決定版と言えるように、圧倒的な質量で詳しく楽しくこの重要な単語についての情報をシェアします。

 

「ain’t」との出会い

本当にその曲が初めてだったのかと聞かれると、やや自信がありませんが、英語の歌の歌詞を意識して聞いたのは、カーペンターズとビートルズだったので(中学1年)、そこから類推して、今パッと思い出すのが↓の歌です。

Do you, don’t you want me to love you
I’m coming down fast but I’m miles above you
Tell me, tell me, tell me, come on tell me the answer
Well, you may be a lover but you ain’t no dancer

 

ご存知、元祖ヘビーメタルとも言うべき、『ヘルター・スケルター(1968)』です。

ポール・マッカートニーが、それまでにないくらいの大きな声でシャウトし(珍しくリードギターも演奏)、ベースのバランスもかなり上げ気味でブンブン鳴らし(珍しくジョンが演奏)、聞くものを圧倒します。はじめて聞いたときはロックについて何も知らない中1の坊ちゃんですから「随分やかましい曲だなぁ。この人大丈夫かなぁ」くらいの印象しか持たなかったように思います。

さてこの曲の2コーラス目の終わりでマッカートニーは、「ain’t no dancer」と歌っています。今考えるとただ韻を踏むだけの言葉遊びなんですが、とりあえず「ダンサーじゃない」と言っていることは中1の英語力でも想像はつきました。ただし習ったばかりの「be動詞」の位置に「ain’t」という、辞書を調べても出ていない単語である点から、なにやら「不穏当な」言い回しであることも類推できました。

 

そして、40年以上ポピュラーソングを聞いてきた今現在、「ain’t」を使う曲で一番最初に思い浮かぶ曲と言えば、なんといっても↓です。

You ain’t nothing but a hound dog
Crying all the time
You ain’t nothing but a hound dog
Crying all the time
Well, you ain’t never caught a rabbit
And you ain’t no friend of mine

ご存知、エルビス・プレスリーの初期の名曲『Hound dog』。

なんといってもまず最初のフレーズですでに「You ain’t nothing but~」と歌っています。しかも、この曲はイントロなしで、いきなり歌始まりですので、そのインパクトはかなり強烈です。「You」の直後の2語目で「ain’t」ですからね。

しかも、コーラスの最後もまた「ain’t no friend of mine」で締めくくられます。

↑の『ヘルター・スケルター』もそうですが、「ain’t no~」と「二重否定」を使っている点も、よりワイルドな感じを醸し出していますね。

『Don’t mean a thing if it ain’t got that swing(スィングしなけりゃ意味ないね)』という有名なジャズ・スタンダードがありますが、本来なら「(It) doesn’t mean a thing」となるべきところを、「(It) Don’t~」とやってます。これもまたワイルドな言い回しですね。

 

多様な用途を持つ短縮形

私的な「ain’t」との出会いの話はこれくらいにして早速、「ain’t」の分析に入りましょう。

 

この言葉の用途で一番多いのは、「am not」「are not」「is not」など「be動詞+not」の短縮形として使われる例です。

しかし、be動詞以外で使われる例も耳にしますので『Cambridge Dictionary』で調べてみました。

“ain’t”

やはり、

short form of am not, is not, are not, has not, or have not:

 とあり、「has not」「have not」の省略形としても使われることがしっかりと書かれています。

また、Noteとして↓の記述があります。正式な場では使わないことがわかります。

This word is not considered to be correct English by many people

 

Wikipedia(En)で詳しく調べてみた

オンライン辞書は、7-8サイトほど見てみましたが、(例文の多少の差くらいで)どれもさほど変わり映えしなかったので、もっと詳しく確認すべく、Wikipedia(En)で調べてみました。

Wikipedia(En)では、そこそこの文字数が割かれており、びっくりしました。やはり世界中みんな気になってる重要語なのですね。

ちなみに、wiki日本語には「ain’t」はありませんでした。誰かやらないんですかね。直訳でいいなら、今度私がやりましょうかね。社会貢献ということで。

取り急ぎ、本稿で以下その概要をシェアします。

 

前提

Cambridge またはOxford Living Dictionariesでの解説に加えて、「do not」「does not」「did not」と、doの省略形としても使うと書かれています。

18世紀に「be not」の省略形として登場し、19世紀初頭には「have not」の省略形としても使われるようになりました。

「ain’t」の使用は英語において、現在でも議論の的になっているものの、口語では多くの人に使われています。しばしば、強烈な汚名を着せられており、「社会経済的に低い層」「特定地域の出身者である」「教育レベル」を示すマーカーとして機能していると書かれています。

 

語源

上で見たように、今では多様な否定形の省略形としてほぼ「万能」といっていい機能をもっている「ain’t」ですが、実はその語源は、バラバラだったらしいです。

  • 「am not」の省略形として「amn’t」と変化したが、その後「mn」の連続を嫌うことから、「an’t」に変化。
  • 「aren’t」の「r」を発音しない(ノン・ローティック)な方言に合わせて「r」が脱落し「an’t」に変化。
  • 「isn’t」は、ときおり「in’t」または「en’t」と綴られていたため、これが「an’t」に変化。
  • 「have not」は、「han’t」または「ha’n’t」と省略されることがあったが、ときおり母音が「ei」に変化するとともに、おなじみの「hの脱落」が発生し、結果として「ain’t」に変化。
  • 「did not」を意味する「ain’t」は、アフリカン・アメリカンなどの方言において特徴的だとみなされる。彼らが第二言語として英語を習得した際に導入されたもの。時制が中立化して、「do not」「does not」の省略形としても使われるようになった。

と、1つずつ「ain’t」に至ったオリジナルが異なることがわかります。

 

言語学的特徴

言語学的には、助動詞の省略形とみなされています。ほとんどの言語学者は「ain’t」は、ネイティブスピーカー間において意味が通じ、また語順的にも問題ないため、文法にかなった用法(grammatical)だとしています。

ただし、「文法上の正しさ(grammaticality)」と「容認可能かどうか(acceptability)」は別問題であり、特定の状況下においては社会的に容認されない、としています。

また、「amn’t gap」と呼ばれる問題(そんなの知りませんでしたが)を埋める役割を担うものとして使われます。

*「amn’t gap」とは、他の「be not」に広く容認されている省略形がある(「aren’t」「isn’t」)があるにもかかわらず、「amn’t」は(使う地方はあるものの)同様に広い容認を得ていないため、このギャップを埋めるため「ain’t」が使われる、という話。「You aren’t」も「You’re not」もOKだし、「It isn’t」も「It’s not」もOKな一方で、付加疑問文の「~, amn’t I ?」はたまに目にしますが、平叙文の「I amn’t」は聞きませんね。なるほど。

 

禁止と汚名

「ある特定の社会集団の構成員とそれ以外の人々を見分けるための文化的指標」を表す用語に「シボレス」というものがあるそうですが、「ain’t」もその1つ。

「ジャーゴン(専門用語、隠語)」と似た様な概念ですね。言葉のみならず、同世代に共感を持てるポップソングやテレビ番組も、シボレスとして機能するとのことです。

しかし歴史的にみると、この「ain’t」はそこまで特殊な言葉ではなく、17世紀から19世紀にかけて、広範な社会的・宗教的文脈で容認されていました。実際に、スイフト、バイロン、エリオット、サッカレー等の文筆家も使っていたようです。

ただし、どの時代、どの国にもそういう人はいるようで、すでに18世紀には「正しい英語を使おう」と呼びかける「規範文法」順守派の作家の目の敵になり「野蛮だ」とされていました。

 

地域と方言

「ain’t」は英語圏で極めて広く使われている非標準英語であり、「I can’t get no satisfaction」等」といった二重否定(double negative)とともに、2大禁止用法です。

 

英国では、特にコックニー方言と結び付けられることが多く、↓の「ピグマリオン(映画化されて「マイ・フェア・レディ」に)」では↓のように、主人公のイライザは「ain’t」と「nothing」の「二重否定」を使っています。

I ain’t done nothing wrong by speaking to the gentleman.

 

レトリックと一般的用法

「ain’t」を調べているとあちこちで見かけるのが↓の格言ですが、このwikiページでも紹介されていました。

If it ain’t broke, don’t fix it.

 

まぁ、十分機能しているにもかかわらず、なんとなく触りたくなってしまうのが、人間だとも思いますが、大いに思い当たる節がありますね。

 

他の定型句として↓が紹介されています。

You ain’t seen nothing yet.

直訳すると「前はまだ何も見ていない」になりますが、「お楽しみはこれからだ」「これからが本番だぜ」的な意味の定型句です。

 

有名な用例

大人気のメジャーリーガーであるシューレス・ジョー・ジャクソンまでが、1919年ワールドシリーズの八百長事件(ブラック・ソックス・スキャンダル)に関係していたことを知った少年が言ったといわれる、↓の出所不明のセリフが紹介されていました。

Say it ain’t so, Jo. (嘘だと言ってよ、ジョー。)

 

また、面白いことに、多くのアメリカンヒットソングが記されていましたの、紹介かたがた動画を貼っておきます。どれも名曲ぞろい。


“It Ain’t Necessarily So (1935)”

ガーシュイン作曲。ミュージカルの先駆けとなった「ポーギーとベス」の挿入歌。

後にジャズのスタンダードとなり、多くのミュージシャンが名演を残しています。最も有名なバージョンの1つ。マイルス・デイビスのトランペット。『Porgy and Bess(1959)』より。なによりジャケットがかっこいい。

 

 

“Ain’t that a shame (1955)”

ファッツ・ドミノが作曲し自身で歌い、1955年に大ヒットさせた曲。

その後、パット・ブーン(1955)、フォーシーズンズ(1963)、チープ・トリック(1978)、ポール・マッカートニー(1988)等数多くのカバー・バージョンが作られることに。今回は、私の一番好きなジョン・レノンのバージョン。フィル・スペクターと組んだカバー・アルバム『ロックン・ロール(1975)』より。ちなみに、このジャケットもかっこいいですが、この写真はレノンが10代の頃に撮影されたものです。自分が10代の頃に聞きまくっていたロックン・ロールの名曲カバー・アルバムのジャケットにその頃の自分の写真を持ってくるあたりがまたかっこいいですね。

 

 

“Ain’t No Mountain High Enough (1967)”

マーヴィン・ゲイが、タミー・テレルとデュエットして大ヒットさせたR&Bの名曲。

タミーはこの曲で、マーヴィン・ゲイとの3人目のデュエット・パートナーとして大ブレイクするものの24歳で脳腫瘍が原因で早逝した。22歳の溌溂とした歌声はステージ恐怖症のマーヴィン・ゲイを勇気づけたとのこと。

まだまだ20代後半の若きマーヴィン・ゲイが、↓のように切々と、また爽やかに歌い上げています。曲の冒頭から「ain’t」から始まるフレーズを畳みかけています。

Listen baby     
Ain’t no mountain high  
Ain’t no valley low
Ain’t no river wide enough, baby

彼を阻むものは何もないんですね。しかし男前だ。

 

“Ain’t No Sunshine (1971)”

ビル・ウィザーズがデビューアルバム『Just as I am(1971)』に収録し、シングルカットされ大ヒットさせた名曲。

カバー・バージョンが数多リリースされており、マイケル・ジャクソン(1972)、フレディ・キング(1972)、ナンシー・シナトラ(1973)、ネヴィル・ブラザース(1996)等どれも大ヒットに。

ビル・ウィザーズは、その後のグローヴァー・ワシントン・ジュニアの『クリスタルの恋人たち=Just the Two of Us(1981)』でのヴォーカル客演が有名。

ちなみにこの曲は、以前に10本以上に分けて徹底解説したNetflixのドラマ『After Life』の劇中歌としても使われています。最愛の妻に先立たれて、やぶれかぶれになっている中年男性を描くドラマなので、「君が去ったのち、太陽も輝かないよ」と歌われるこの曲がぴったりです。視聴者の年齢層を考えても、ジャストな選曲でした。

詳しくはこちらから。

 

“Ghostbusters (1984)”

80年代の大ヒット映画『ゴーストバスターズ』のタイトルソングをレイ・パーカーJr.が歌って、映画同様ヒットした曲。

タイトルには「ain’t」は入っていないものの、曲の途中で「I ain’t afraid of no ghost」というタグラインが何度も繰り返される。また同様の曲中のタグライン「Who ya gonna call?」は一種の流行り言葉になり、今でも映画などで、誰かが「Who ya gonna call?」というと相手が「Ghostbusters!」と答えるのがお決まり。

 

さて、最後はヒット曲紹介となりましたが、とりあえず「日本語で読めるain’tの解説ページ」としては、6,500文字くらい費やして、エンタメもありと、質量ともに決定版と言える投稿に仕上がったように思います。

一応自分のメモ用に書いたような投稿ですが、まだまだwikiの長文の英語を読みこなせないような(しかし「ain’t」に興味を持った)10代の頃の私のような方にとっては、少しは役に立ったかと思うのですが、いかがでしょうか。

 

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Posted by yaozo