Netflixで『Sherlock』のイギリス英語を完全制覇:その2
yaozoです。
ベネディクト・カンバーバッチ版『Sherlock』のシーズン1エピソード1『ピンク色の研究』の読破企画、前回の第1回ですでに6,000文字超書いた割には、前置きが長く、本編突入後、2フレーズしか触れてませんでしたので、2本目からはできるだけガンガン行きたいと思います。
Yeah, like that’s going to happen.
ばったり出会った医大時代の旧友に、軍医時代の恩給だけでは、家賃の高いロンドン住まいは簡単ではないとこぼすワトソン。
旧友が「ハリー(兄ではなくて実は姉。ネタバレですが)に頼めないの?」との質問に応えて言うセリフです。
日本語字幕では
論外だ
と一蹴しています。
原語では “going to happen” と肯定文になっているのに、なんで否定文なのでしょう。
調べてみますと、やはり同じように『ピンク色の研究』の英語を読み下している方のページでヒントがありました。
“like” が ”like hell” の省略形ではないか、というのです。それだと意味が通じると。
そりゃ一体どういうことかとweblioで調べてみると
(2)[語句・分の前に置いて] まったく…でない.
・”You’ll go, won’t you?”__”Like hell I will.” [行くでしょう][行くもんか].
とありました。
ほんとだ、これなら全く通じますね。この種の驚くような(トリビアルな)発見できるんで、こういうフレーズバイフレーズのやり方が面白いんですねぇ。調べてみるもんですわ。
ワトソンの場合、”like” の前に “Yeah” まで入ってますんで、かなり皮肉めいた否定文なんでしょうね。「まぁ~、そりゃないね」って感じでしょう。なので、Netflixの字幕では「論外だ」となっているのでしょう。わかりました。
lipstick
シャーロックに片思いしている法医学者モリーが、急に口紅をつけてシャーロックの気を引こうとした際に、口紅に気づいたシャーロックが言います。
You’re wearing lipstick. You weren’t wearing lipstick before.
と2つの文なのに、あたかも1つの文みたいに、平板かつ一気に言い放ちます。
このあたりで、シャーロックの女性に対する冷たい感じが出てるとともに、人間の情緒みたいなのがわからない、ソシオパス的な気質がうまく表現されています。
ちなみに、これを指摘された後、口紅を落としてシャーロックの前に現れたモリーに、「なんで口紅落としたの?なんだか口が小さすぎて見えるよ」などと無礼なセリフを投げつけます。すごいですね。
このモリー、シャーロックに対して片思いで、結局最後まで実らないのですが、どんどん重要な役割を担うようになりますので、目が離せません。
モリーファンと思われる方の編集したモリー動画です。切ないですねぇ。
2年前のインタビュー。2017年3月とクレジットがありましたので、1月にシーズン4が放送された直後のインタビューです。シーズン5はありやなしや的な話も質問されています。
I don’t talk for days on end.
シャーロックがワトソンに、ルームメイトにならないかと提案する際に自己紹介をしているセリフの一部です。
これは単純に、”on end” という副詞句を知らなかったので、備忘のために書いておくだけです。こんなの初めて聞きました。
※ところで、ホームズはファーストネームで書き、ワトソンはサーネームで書いている点に関しては、タイトルが『シャーロック』なので、ホームズと書くとピンときませんし、ジョン・ワトソンのことを「ジョン」と書くのも、名前が平凡すぎてこれもピンときません。なので、この不一致はご容赦ください。
weblioでは、
(日時が)引き続いて
とあります。
で、マンガ版では↓こうなってます。
(考え事があると)何日も口をきかない事もある
a difficult man to find a flatmate for.
上にも似たようなパターンありましたが、最後に前置詞がくるパターンです。これはノンネイティブが忘れがちなやつではないでしょうか。
原文は、↓のような文章です。
Told Mike this morning I must be a difficult man to find a flat mate for.
文頭に主語の “I” が省略されてます。英語でもフツウに主語を省略することがある、動かぬ証拠です。みなさん、わすれないようにしましょう。平叙文で動詞から始まってます。
それはさておき、この “for” がなぜ必要かという話です。
まず “I must be a difficult man” であると、「自分が難しい男である」と言って、その後、何に関して難しい男なのかを修飾する説を “man” の後ろにくっつけます。
“to find a flatmate” してあげるのに関して難しい男であると。
なので、”to find a flatmate for a man” ということになります。
仮に “I must be a difficult man to find a flatmate.” としてしまうと、「誰か他の人のために」ルームメイトを探して(世話して)あげるのが下手なやつ、みたいなニュアンスが出る上に、そもそもコンテキストが成立してませんね。そう言いたいのであれば、”I must be an appropriate man to find a room mate (for you).” などのほうが自然です。
ここはそうではなくて、この “man” 自身のためのルームメイトを探すのが容易ではないやつ、という意味にするためには、”for” が “man” に回帰してくるわけですね。
う~む、こういうのが一番難しい。
Wasn’t a difficult leap.
マンガ版では↓こうなってます。
簡単な推理だ
主語が不要な事例の2番目です。今更とりたてて言い募ることではありませんが、英語での主語の脱落は、このドラマだけ見てても、ほんとに頻繁と起こります。なので、もういちいち触れません。
特に相手の話を引き取ってしゃべるときなんかは、そもそも主語(テーマ)が共有されているんですから、話を引き取る際に、自分もわざわざ主語を言う必要ありませんからね。
それはさておきなんですが、”leap” は ”jump” などの同意語ですから、一般的には、飛躍、跳躍という意味で使われます。
それが転じて、「推論」という意味で使われているわけですね。抽象的作業(ある事実から別の事実を引き出す)を視覚的に表現しています。
Shot in the dark. Good one though.
マンガ版では↓こうなってます。
当てずっぽうだが、一応根拠はある。
暗闇で銃を撃ってる、ってことですね。で、「なんとなくの勘で」とということで「当てずっぽう」ということになるわけですね。これも視覚的な表現ですね。
ビジネスシーンでも使えるようです。たとえば↓こんな感じで。
“I’m not quite sure, but if I take a shot in the dark, maybe this system isn’t working well.”
「自信はありませんが、当てずっぽうで言わせて頂けるとするなら、おそらくこのシステムがうまく作動していないんじゃないかと思います」
なんとなく似たような視覚的表現で、”beat around the bush” という慣用句を思い出しました。
「当回しに言う」という意味です。
林の周りを叩く、ということで、林の中にいる肝心のポイントには触らないみたいなイメージですね。
xxx
“x”がメールとかでキスを表すのは、欧米文化に慣れ親しんで知る人ならだれでも知っていることですが、そうでない人には、全く意味がわからない、というあるある的なやつですね。
ワトソンの持っているスマホが、兄(本当は姉)からもらったもので、そもそもその兄も、誰かからもプレゼントされたものだ、と推理するシャーロック。
これは、スマホの裏に、
From Clara
xxx
と刻印されていたのを見逃さなかったから推理できたわけです。
で、この “xxx”を読む時には、”three kisses” となるわけですね。
キス3つは、フツウの関係じゃないだろ、ってことです。
そういえば、私も仲のいいラングエッジエクスチェンジのパートナー女性からのメールで、この ”x” を最後に付けられますが、”x” か “xx” です。3つはないですね。
3つ以上がフツウではなくなる、ということが類推されます。なるほど。そうか。
ところで、ワトソンの推理を披露しているシーンもずっとタクシーの中で行われていますね。この点も、今回はタクシー運転手が犯人であることを示唆しているとも言えます。
このタクシーも、そろそろ4人目の被害者の犯罪現場に到着しそうなところなので、本稿はこれくらいにします。
おお、初回はかなり心配しましたが、2回目は7フレーズも学習できました。よかった。
ではまた。
p.s.
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