「アナ雪2」ステマ疑惑事案に学ぶ、失敗しないためのデジタルプロモの常識

ドラマ・映画

yaozoです。

本日は、四半世紀にわたるサラリーマン生活で得た知識に基づいて、企業のコミュニケーションについて頭の整理をしてみたいと思います。

特に最近は、デジタルインフラの急激な進展により、ここ数十年にないほどの劇的なコミュニケーション環境変化があります。

そういった意味で、企業コミュニケーションの歴史と只今現在の状況について整理しておきたいと思います。

 

ステルスマーケティングについてとりあえずおさらいを

先日、「アナと雪の女王2」のステマ疑惑問題が起こりました。

これは、ディズニーが同映画の広告として、Twitterで人気の中堅マンガ家に経済的対価を与え、試写会で映画を見てもらい、劇場集客を狙ってポジティブな感想をマンガにしてもらい、自身のTwitterアカウントで「『広告』の表記なしに(中立的な感想であるかのように偽装して)」投稿してもらったという案件です。

いわゆる「ステマ事件」ですね。

さて「ステマ」とはなんでしょう。こういうよく聞く話ほど、その語の定義をちゃんと確認しておく必要があります。

ステマとはステルスマーケティングの略です。“Stealth(こっそりとすること) Marketing”でして、よくある日本語の造語ではありませんので、外国のマーケッターにも通じます(「ステマ」は通じません。もちろん)。

ただ、面白いのが、イギリスでは”Undercover Marketing”と呼ぶようで、世界共通かとおもっていたら、さすがイギリス、こんな新しい言葉でも、アメリカと違うとは驚きです。

“elevator”と”lift”どころの話じゃない、超新語ですからね。イギリスの意地なんでしょうか。わかりません。

 

それはさておき、ステマは実は既に日本でも法律の場で定義がされています。

 

「消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすること(平成27年7月28日東京地方裁判所判決)」

http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/261/084261_hanrei.pdf

(英会話教材のステマ事件)」

 

具体的には、↑の文書内を「ステマ」で検索かけると以下の項にあたります。

 

ア 本件表示は,原告教材の口コミは「ステマ」であり,「嘘」である旨を表示したものである。

イ 「ステマ」とは,「「ステマ」とは,「ステルスマーケティング」の略であり,一般消費者に宣伝と気付かれないよう宣伝する手法であって,例えば自社商品の宣伝を口コミや感想の形であたかも一般消費者の評判が良いかのように表示する行為等を指すものである。このような行為は,当該事業者の商品又はサービスの内容等が実際のもの等よりも著しく優良又は有利であると一般消費者に誤認されるものである場合には不当景品類及び不当表示防止法(以下「景表法」という。)違反ともなり得るものであるところ,一般読者が通常の注意と読み方をもって本件表示に接した場合,原告が,原告教材について,口コミサイトで自ら嘘としか思えない高評価を投稿するという,ステルスマーケティングを実施しており,呆れるものと読めるものであり,本件表示は,原告の営業上の信用を害するものに当たるところ,一般読者が通常の注意と読み方をもって本件表示に接した場合,原告が,原告教材について,口コミサイトで自ら嘘としか思えない高評価を投稿するという,ステルスマーケティングを実施しており,呆れるものと読めるものであり,本件表示は,原告の営業上の信用を害するものに当たる。

 

とあります。

(ところで、こういうの見慣れていない人には、苦痛としか思えないような文章かもしれませんが、サラリーマンやってると、こういうような文書、読みたくなくても読まなきゃならない局面がありまして、読んでれば慣れてきます。当然ですが)

 

さてつまり、「ステマをやった」というのは、上記アにあるように、「消費者に嘘をついた」ということですね。

 

日本は判例主義なので、その後の案件は、よろず本件の定義を引いているとのことらしいです。

 

これを企業人風に読み替えますと、

「企業やブランドが第三者に経済的対価(金銭、物品、サービス等)を提供して、業務として発注しているにも関わらず、中立的な立場であるかのように偽装して、企業やブランドにとってポジティブなコメントや評価を投稿させる行為」

となります。

また、wikiによると、

当初はあまり売れなかったが、西城秀樹が上半身裸、短パンでウォークマンを聴きながらローラースケートをしている写真が『月刊明星』1979年9月号(発売は7月末)の見開きページに掲載されたのを機に、各雑誌で取り上げられ、8月に入り各店舗で品切れが続出し、その後の大ヒットに繋がったといわれる。

と書かれています。

 

過去のステマ事例

ソニーは、こういった事例に味をしめたのか、2001年に発売されたiPodにポータブル音楽デジタルデバイス市場(もとは自社が作ったポータブル音楽視聴市場だ!)を完全に席巻されてしまっていた2005年秋、大変有名なステマ事件を起こしてしまいます。

これが「ウォークマン体験日記」というものです。

ソニーは「ウォークマンAシリーズ(私も買いましたが、ソフトがひどくて無理でした)」でASAPでその差を縮めたいと考えていたかなりのストレス下に置かれていたであろうと思いますが、そんな中、キャンペーンのための「ブログサイト」を解説しました。

これは、4人の「一般人モニター」にウォークマンAを実際に使ってもらって、その実感をこのブログに書いてもらう、というものでした。業界でいうところの「モニタリング施策」というやつです。

詳しい経緯は以下のImpress BUSINESSMEDIAの記事で読めます。

https://webtan.impress.co.jp/e/2007/04/03/858

本件が問題となったのは、簡単に言ってしまうと、モニターの1人の「メカ音痴の女性」と称する方がアップしている写真に写りこんでいるものから類推すると、この人は「メカ音痴でもなんでもない、そこそこガジェットに詳しい雇われた素人ではないか」というものでした。

写真にはマックが映り込んでいたり、ライティングがプロの使うものだと言われたり、と大炎上しました。

 

しかし、ソニーとしては、あくまでもこれは「やらせではない」という主張の上で、突然サイトを閉鎖してしまったため、よけいに火に油を注ぐ結果となりました。

 

最近でもソニーは、任天堂等競合他社のゲーム機を誹謗中傷しソニーの製品(PSP)を宣伝する書き込みをし、「少人数ではとても行えない規模」によるものが、ソニーの社内LANからあったことが、発覚するという事件を起こしています。世にいう「ゲートキーパー事件」です。

また、コングロマリット企業であるソニーは映画も抱えていますが、このフィールドでもやっちゃってます。

架空の映画評論家デビッド・マニングという人物をでっちあげて、ソニー・ピクチャーズの映画を賞賛する記事を投稿する、というちょっと考えられないステマをやってました。これは『ニューズウィーク』の調査で捏造であることが発覚し、社が謝罪し経営幹部2人が一時的に停職処分を受けたとのこと。その後、映画愛好家が訴訟を起こし、レビューを見て映画を見たが不満足だった観客全員に5ドルずつ、計150万ドルの賠償金を支払ったとのこと(wikiより概要編集)

 

その他の事例

■ペニーオークション詐欺事件

■食べログ高評価事件

■京都市ステマ騒動(人気漫才コンビ「ミキ」が京都の観光誘致プロモーションにインスタグラムを活用した。明確に「#広告」などのハッシュタグを張っていなかったため「ステマでは?」と話題になった事例)

 

ステマの定義を説明しているだけで、すでに3,000文字を使ってしまいました。まずい。

近年のステマを取り巻くエトセトラについてご存知ない方は以下のサイトを読むと、大体の小歴史が学べます。

ベクトル社が名指しステマ記事にホームラン級にアレな反論をして広告業界大困惑の巻 山本一郎 | 情報法制研究所 事務局次長/上席研究員 2015/11/3(火) 11:00

ということで、「アナ雪2ステマ疑惑事例」です。

 

 

「アナ雪2ステマ疑惑事例」

それでは具体的なタイムラインをさらっておきましょう。

※2018年12月5日(木)ヤフー記事「アナ雪2のステマ騒動で考えるべき、ステマ疑惑の大きすぎる代償 徳力基彦 | ブロガー/noteプロデューサー/アンバサダー 12/5(木) 7:00」を元に構成しました。

 

12/3(火)19:00: Twitter上の人気マンガ家7人が、PRマンガを自身のアカウントに投稿

12/3(火)19:00~: 一部のTwitterユーザーの間で不自然さが話題になる

12/4(水)朝8時頃: 関連のツイートをまとめたTogetterが作成される

12/4(水)9時頃: 「#PR」をつけた作家の釈明コメントが、7本同時に投稿される

12/4(水)15時37分: ITmedia NEWSがこれらのステマ疑惑について記事に

12/4(水)17時16分: 上記記事がヤフートピックスにのる

12/4(水)19時17分:  ITmedia NEWS が「伝達ミスだった」「ステマではないと認識」 アナ雪2の“ステマ疑惑”にディズニーがコメント」との記事を報じる

12/5(木)20時05分:  ITmedia NEWS が「ディズニー、アナ雪2“ステマ疑惑”で謝罪 「感想を自由に表現してもらう企画だった」との記事を報じる

12/6(金)8時頃: フジテレビ「とくダネ!」など地上波TVで一連の事案について取り上げられる

12/11(水)22時10分: ITmediaねとらぼが「2019年12月11日 22時10分 公開 「アナ雪2」ステマ騒動、ディズニー声明後に漫画家らが初めての謝罪 「『PR表記必要ない』との説明受けた」 (1/2) あらためて謝罪しました。」 との記事を報じる

 

今のところこういったところでしょうか。

最後のねとらぼの記事に詳しいですが、ディズニーは、今回の「アナ雪2」のみならず、これまでにも「アラジン」「アベンジャーズ」「キャプテン・マーベル」などでも類似行為が疑われているとのこと。

今回の事例では、関係者は以下の立場をとっています。

 

・ディズニー(公式HP上でのリリース):自社の責任であり、クリエイターには責任がない。謝罪とともに再発防止を表明。

https://www.disney.co.jp/corporate/news/2019/20191211.html

 

・クリエイター(一部表明者):依頼主側から作家達が同じ時間、同じタグを使用するのでPR表記は必要ないと説明がありましたので、その指示に従いマンガをツイートした(小雨大豆)

ただし、その間に入っていたとされる、広告代理店とエージェントからは何のコメントも出されていません。

以下の記事はこう結ばれています。

2019年12月16日 12時00分 公開 「PR入れないでと指示受けた」 ステマ問題、漫画家側は知らずに関与か、PR漫画家に実情聞いた 「いざステマが問題になると、矢面に立たされるのは漫画家」と、代理店やエージェント会社の対応に不満も。

 

また現状、ディズニーと漫画家は謝罪しているものの、漫画家に具体的な指示を出したとされる代理店、あるいはエージェント会社側からは何の声明も出ていません。「PR表記を付けない」という判断はどこが行ったのか、当初漫画家側が謝罪していたのはどこの指示だったのかなど、いまだ不明な点は多く残っています。

 

各種ガイドライン

まず「共通のタグがはいっていればステマにあたらない」というのは全くの誤り。

業界で参照される「WOMJガイドライン」では、「#広告」など、PESO理論でいうところの、Paid(広告)であることが見た人にわかりやすいハッシュタグを具体例をあげて説明しています。

https://www.womj.jp/85019.html

とにかく、ここにあるハッシュタグのどれか(「便益タグ」などと呼ばれます)をつけておけば、「ステルス(隠れて)」ではなく、天下晴れて「広告ですよ」と表明しながらの投稿であることが明示的なので、ステマにあたりません。

この点は、極めて簡単で決定的なので、特に迷う必要は全くありません

たとえば、日本パブリックリレーションズ協会という、関連団体のガイドラインにおいても、デジタルメディア上での手法については「WOMJのガイドラインも十分に参照し」とまで書いてあるのですから、少なくとも現時点では、これを守っていれば誰にも文句を言われません。

https://prsj.or.jp/about/pr-guideline/

同協会では、印刷媒体(新聞・雑誌)のいわゆる編集タイアップ型広告においては、オーガニックな「パブリックリレーションズ活動(PR活動)」に対する誤解を生じる可能性があるので、「PR」という表記は推奨しない、としています。手法はどうあれ、広告なのですから、「広告のページ」「〇〇社提供」などの表記を推奨しています。

 

ちなみに、多くの人気YouTuberを抱えるUUUMは東証一部上場企業ですが、以下のような「動画タイアップ」に関する「提供表示ガイドライン」を自社で設けています。

https://www.uuum.co.jp/2019/09/25/40517

ちなみに、Twitter、Facebook、Instagramにおける「SNS投稿に関する提供表示」についてもガイドラインを持っています。

https://www.uuum.co.jp/2016/09/16/7738

 

結論としては、とにかくレガシー系メディアなら日本パブリックリレーションズ協会のガイドライン、デジタル系ならWOMJのガイドランに準拠していれば、ステマと言われずにすみますので、いずれの方も、これに準拠して活動してくれれば、こういったコミュニケーション業界における事故事例が発生しないといことです。

また、SNSは実際に現代のマーケティングにおいて必須で最強であることはほぼ確実なので、↑のお約束をちゃんと守ったうえで、以下のような優れた教科書で勉強すると良いと思います。


 


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Posted by yaozo