Netflixで『Sherlock』のイギリス英語を完全制覇:その7
yaozoです。
ベネディクト・カンバーバッチ版の『Sherlock』のシーズン1のエピソード1『ピンク色の研究』の読破企画。第7回です。そこそこ読んでいただいているようですので、まだまだがんばります。
前回までは、犯人をおびき寄せて、あやしいタクシーの乗客までつきとめたのですが、はずれだった(アメリカからの観光客)だった、というところで終わっています。
じゃあ家に帰るか、と帰宅したところ、レストラードのチームがベーカー街のアパートに捜査と称して押し入って待ち構えていました。
John, You probably want to shut up now.
シャーロックが、ピンクのスーツケースを見つけたくせにレストラードに知らせずに、勝手に操作を進めていることに腹を立てたレストラードは、ありもしない「麻薬捜査」と称して、部屋をあさっています。
それに腹を立てて、「そんなもん一日中探したって出てくるわけないじゃないか」とストレートに怒りをぶつけるワトソン。
そんな彼にシャーロックが言った一言。
John, You probably want to shut up now.
ジョンもういい 黙ってろ
出ましたね、この”want to”の用法。口語ではほどんどの場合”wanna”と発音されます。
これ直訳すると、「ジョン、君はもしかしたらもう黙りたいかもよ」となり、なんだかおかしな文章になります。
この際の”want to”は英語ドラマや映画を見ていると、口語でしばしば耳にするフレーズで、はじめて聞いたときは新鮮な驚きを感じたものです。
ちょっと調べてみましょう。
weblioでは、一般的な「~したい」用法しか出ないので、英英オンラインで調べます。
Cambridgeで出てきました。
used in giving advice to mean that someone should do something:She wants to tell him now, before it’s too late.You don’t want to put too much pepper in.
I’ll stand them down.
いやがらせのためだけに、ありもしないドラッグの家宅捜査をしているレストラードがシャーロックに言います。
Or you could help us properly, I’ll stand them down.
君が態度を改めれば、引き上げてやる
独断専行で、勝手に動き回っているシャーロックを協力的にさせるために、意図的にやっている意地悪なわけなので、ちゃんと強力すれば、チームを今すぐひきあげるよ、といっているわけです。
“stand sb down”というフレーズは、はじめて耳にしたので調べてみると、Longmanでは以下のように書いてありました。
3 stand (somebody) down if a soldier stands down or is stood down, he stops working for the day
You’re putting me off.
シャーロックのフラットをがさ入れしているチームの中に、シャーロックが大嫌いな鑑識担当の男性アンダーソンも来ています。
皆が自分の部屋でめいめいぺやくちゃしゃべりだしているんで、考えに集中できないシャーロックは、全員に「黙れ、動くな、何も言うな、息もするな」などとシャウトします。
最後にアンダーソンには、特に名指しで
I’m trying to think. Anderson, face the other way. You’re putting me off.
アンダーソンあっち向いてろ 僕の気が散る
などと酷いことを言います。
いやしかし、シャーロックの『ピンク色の研究』、難しい単語がたくさん使われているのは、容易に想像がつきましたし、それは全く知らない単語なので、考えても仕方ない単語ですから、諦めて調べるしないです。
しかし、↑の”stand sb down”もそうですが、この種の中学生で習う単語の組み合わせフレーズで、知らないのが頻出すると非常に深堀りのし甲斐がありますね。”put”と”off”ですよ。それでなんだかわからない、ってんですから、面白い。
“put sb off”でググってみると早速でてきました。Cambridge。
to make someone dislike something or someone, or to discourage someone from doing something:
誰かに何か/誰かを嫌いにさせる、または誰かが何かをする気をそぐ
といった意味です。この場合は、やる気が出なくなる、という意味で使われているようですね。
Just the back of an ‘ead.
221ベーカーストリートで、警察、住人入り乱れてワーワーやってるところに、一台のタクシーが泊って、シャーロックを読んでいるとのこと。考えに集中しているシャーロックは、Mrs.ハドソンが「タクシーが、タクシーが」としつこいのを静止していたシャーロック。
しかし急に、なにやらひらめいたようで「わかった、タクシーね」と、外に出ます。
そして犯人であるタクシー運転手と初対面(正確には、タクシーチェイスの時のドライバーが犯人だったわけですが)。
「そうか、タクシー運転手なら、透明人間同様だ。頭の後ろしか見えないし、ハンティングするには最適だ」ということでタクシードライバー(cabbie)が犯人だとわかるわけです。
ここで私がひっかかったのは、「頭の後ろしか見えない」という際の
just the back of an ‘ead.
という言い回しなのですが、これは正式には”just the back of a head”でしょう。
ところが、特にイギリス英語に特有の”h”の脱落があり、「頭」が”ead”になる(と発語前に想定されているので)、語頭が母音なので、不定冠詞の”a”が”an”になった、というややこしいことが一瞬のうちにおこっているわけです。
実に面白い。
敢えてカタカナで表記すれば「バッコバ ネッド」となるのでしょう。
他方で、我々が中学生の頃から(今の小学生は、小3からですか)英語を習う際に”h”は「エイチ」「エッチ」と発音するよう習いましたが、イギリス人で、たまに「ヘイチ」と発音する人がいます。私の経験で言っても、相当数の人が、「ヘイチ」と言ってます。まぁ「h音」なのですから、「エイチ」というほうが、「なんでやねん」という気がしますが、長年層習ってきたので、はじめて聞いたときは相応に驚きました。へえ、「ヘイチ」ねぇ、なんて。
それから、なんかのおりに「h」を読む時に、イギリス人、オーストラリア人などと話す際は、わざと「ヘイチ」というようにしています。彼らも、その方がなんだか心地よいようです。出てきたり脱落したりと、このあたりが「h音」の興味深いところですね。
ちなみに、イギリス人は、A~Zの”Z”は「ゼッド」と発音しますからね。
学校では「ズィー」などと米式で教わったりしていながらも、日常生活では「ゼット」と言ってますから、なんだか「ゼット」なんて英語ネイティブは言わないのかと思ってましたし、ならなんで、誰がいつ「ゼット」って訛りだしたのかなぁ、などとぼんやり考えていましたが、なんのことはない、イギリス人が「ゼッド」っていうからですね。「ゼット」ではなく「ゼッド」ですけどね。
ちなみにOxford Lerner’sで調べると、はじめに、”zed”と発音します、つぎに”zi:”と発音します、とありました。なるほど。
元々はギリシア語の「ゼータ」から派生しているので、「ズィー」的な転化の方がむしろまれで、スペイン語(zeta=セタ)、ドイツ語(zett=ツェット)等、他の言語でも「エ音」が残っています。
これを知った時、ホッとしたことを積年のもやもやが解消されて、随分スッキリしたことを今でも憶えています。
ではまた。
p.s.
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