「かばん語」て何?
yaozoです。
映画やTV番組に「モキュメンタリー」というジャンルがあります。
先日昔見た映画について調べていた時に、出くわした用語です。
モキュメンタリー
wikiでは↓のように解説されています。
映画やテレビ番組のジャンルの1つで、架空の人物や団体、虚構の事件や出来事に基づいて作られるドキュメンタリー風表現手法である。
モキュメンタリーは疑似を意味する「モック」と「ドキュメンタリー」のかばん語であり、「モックメンタリー」「モック・ドキュメンタリー」ともいう。また「フェイクドキュメンタリー」と呼ばれる場合もある。
なるほど。こういうコンテンツありますね。
起源は不明瞭なものの、H.G.ウェルズのSF小説をオーソン・ウェルズがラジオドラマにした「宇宙大戦争」が有名だとのこと。
この番組の聴取者が、本当に火星人が襲ってきたと信じた人も多く、パニックになったという話は有名ですね。
その後、架空のバンド「スパイナル・タップ」を追った『スパイナル・タップ(1984)』で監督のロブ・ライナーがインタビューされた際に「モキュメンタリー」という言葉を使ったのが大衆化したトリガーだとのこと。
まぁ、常識的に類推するに、ツェッペリンのアメリカツアーを追った『狂熱のライブ(1976)』みたいな感じの映画を、全く架空のヘビーメタルバンドで真似して(モックして)製作した映画でしょうね。
バックステージの様子や、普段の彼らの生活、そしてロードの様子、最後にマディソン・スクエア・ガーデンでの圧巻のライブ映像、といったブロックで構成されていたように記憶しています。
最新のヒット作としては『ブレア・ウィッチ・プロジェクト(1999年)』が有名です。スリラーの新しいフォーマットとして再注目、リユースされたというところでしょうか。
かばん語?
で、それはさておき、この「モキュメンタリー」という言葉が、「かばん語」である、との説明が気になったので、本日はこれについて考えてみたいと思っています。
wikiで飛ぶと、以下のように説明されています。
かばん語(かばんご、portmanteau word, portmanteau)または混成語(こんせいご、blend)とは、複数の語のそれぞれの一部を組み合わせて作られた語である。
合成語と似ているが、合成語が語の誤記を完全に保って2語を組み合わせたものであるのに対し、かばん語は語の一部分動詞を組み合わせる点で異なる。
例として、”smoke”(煙)+”fog”(霧)→”smog”(スモッグ)等が挙げられる。英語を借用してポートマントーとも呼ばれる。
とあります。なるほどね。
“motor” + ”hotel” = ”motel”なんてのもありますね。
“box” + “exercise” = “boxercise”はひところ若い女性の間で流行りました(流行らそうとされました)。
この言葉は、ルイス・キャロルが『鏡の中のアリス(1871)』の中で、彼が作り出す一連の造語のことを「portmanteau=真ん中で真っ二つに開くタイプの旅行鞄」のようだろう、といったことに由来するようです。
ちなみに、ここで言っている「かばん」のイメージは、今でいう「ドクターズバッグ」みたいな感じで、左右対称でパチンと留めるようなものを指しています。
こんな感じだそうです。出典:Wikipedia(かばん語)
私も上のようなものを一個持っています。もう少し色の薄い、キャメルに近い感じですが、持ち重りがしていかにも大切なものを運んでいる感じになります。
最近は、PCを持ち運びするので、すっかり軽量なバックパック・ユーザーになってしまいましたので、クライアントのところにプレゼンにいくときぐらいしか使いませんが。
言語学や社会学もそうですが、英文学をちゃんとやった人ならそもそも知っている用語でしょうね。私も大学で一応英文学をやったので、そういわれてみれば、聞いたことがあるようなないような、って感じです。やや視線が遠くをさまよいますが、、、、。
で、この言葉を使う目的は、おどけた印象を与えるためは、全く新しいコンセプトを表現するための技術的要請が主たるもので、その後、うまくすれば定着し、造語であったことが忘れられるくらいの言葉もあるでしょう。
商品名に多い「カバン語」
日本語の場合でも、wikiで紹介されていた例として以下のものがあります。
「やぶる」+「さく」→「やぶく」
「とらえる」+「つかまえる」→「とらまえる」
「よそう」+「盛る」→「よそる」 ※ごはんを「よそる」
現代人が比較的目にしやすい例として商品名が挙げられています。それはそうですね。商品名は、かばん語のオンパレードです。
海外ブランドではなんといっても「ネスカフェ(ネスレ+カフェ)」「ネスプレッソ(ネスレ+エスプレッソ)」が有名で、サイトで「かばん語」を検索すると、これしかないのか、っていうくらい頻繁に出てきます。
そんな古い外国の話でなくても、日本にも秀逸な例が沢山あります。
かの有名な「ダスキン」は「ダスト」+「ぞうきん」のかばん語ですね。
プロバイダーの老舗「So-net」は「Sony」の「Internet」でしょうね。
人気グルメサイト「ぐるなび」なんてのも「グルメ」+「ナビゲーション」のかばん語でしょう。
最近の例だと「グランピング」は、「グラマラス」+「キャンピング」で、ちょっとおしゃれがキャンプを指すアクティビティがありますね。
ちなみに、小林製薬の商品名はこれが多い(新商品開発に意欲的な会社ですので当然の帰結ではありますが)。
wikiで紹介されている「熱さまシート(熱さましシート)」の他にも
「タフデント(歯=デントとタフの合体)」
「オドイーター(オドール=匂い、食べる=消臭製品)」
「Sawaday(さわやかな、デイ)」→ CMソングではそのまま「爽やかサワデー」と歌ってます。
「ケシミン(消し、シミ)」
「サラサーティ(さらさら、サーティ)」→サワデー同様「サラッサラーのサラサーティ」と歌っています。
「ブルーレット(ブルー、トイレット)」
「ナイシトール(内臓脂肪、取る)」
と、全部大ヒット商品ですね。ヒット商品はやっぱりネーミングもいいですね。
小林製薬は、企業HPの商品一覧を五十音で見ていくだけで、いかに彼らがこのかばん語を駆使して商品名を開発しているかが計り知れます。
「あったらいいなをカタチにする」を企業スローガンとするこの会社は、なんでこんなに商品開発が盛んな企業なのか、という話は、とても面白いのですが、それはまた別の話ということで割愛します。
「トヨペット(トヨタ+ペット)」なんてのも、かばん語で、これは戦後トヨタ初となる小型車の生産開始にあたって、愛称を一般公募し、選ばれた名称だそうです。
いかにもかわいいですね。1978年には社名としてのトヨペットは消滅しましたが、現在もディーラーの名称の1つとして命脈を保っているようですね。いい話です。
また、人気TV番組のおかげもあって、すっかり定着した言葉「ブランチ」も「ブレックファースト」+「ランチ」のかばん語ですね。
大辞林では「ラジオ」+「カセットレコーダー」で「ラジカセ」という例をあげています。
「来週のハッカソンでなんか発表しなきゃ」なんて焦っている人は、ネーミングについて深く知ることで、アイデアもわいてきます。ネーミングについては↓のサイトがおすすめです。
系統立てて学びたい方は読みやすい斎藤先生の著書もおすすめ。
短縮語とカバン語の違い
ひとつ紛らわしく、また大切な点は、日本人の大得意は短縮形とかばん語は違う、と言う点です。
たとえば、「パーソナル・コンピューター」を「パソコン」と短縮形で言います。
「エア・コンディショナー」は「エアコン」になります。
各々、英語の短縮語なら、「PC」と「AC」ですよね。英語でもカバン語にしません。
これは、そもそもこの2語の組み合わせが存在していたものであり、それを省エネを狙って短くした言葉なだけだからです。
しかし他方、かばん語は、そもそもそのような音の組み合わせは存在しなかったところを、無理やりくっつけていわば「クリエイト」している点がこのかばん語の特徴なわけです。
たとえば、上であげた小林製薬の「ブルーレット」では、「ブルー・トイレット」を省略したわけではないのは明らかです。
順番は逆で「ブルーな洗浄剤を使ってトイレをきれいに保つ」という意味をあらわすために、「ブルー」と「トイレット」をクリエイティブに合体させて造語しているわけです。このあたりは、ややこしいながらも肝心な点かと思います。
新商品開発法にカバン語を
若かりし頃、仕事で商品開発の勉強をしているときに、全くなんら関係のない2語を併せて、無理やり新たな商材のコンセプトを開発するという方法を知りました。
たとえば、「お天気」と「フライパン」は特に関係がない言葉ですがこれをあわせて「お天気フライパン」として、この今はまだない商材のコンセプトを考えると言う訓練/手法です。
このネーミングの商材であれば、とっての部分に気温や湿度が表示できる窓がついていて、今現在の調理のコンディションを調理前に知る、とうことができるフライパン、という商品になります。
TVのグルメ番組を見ていたら、調理人はその日の気温や湿度で調理時間や方法を変える、というのを聞いたことがあるので、気温/室温計が別にあるよりは、調理する現場の最も近く、つまり調理器についているのば最適な場所だということになるわけです。
もちろん、これは手法の紹介ですので、実際このような商品が役に立つのか、成立するのか考えずに思いつきで書いていますが(どなたかほんとに作って構いませんけど)、とにかくこんな風に思いつきで数秒単位で新商品のコンセプトを考える、という手法があるわけです。
小林製薬のように、おそらくは非常に細かい市場調査を行い、「あったらいいなをカタチにするニッチ戦略」をベースに、フロンティアスピリットで商品を開発・上市していくというのも正攻法で大好きです。
かばん語、面白いですね。
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