大瀧詠一『NIAGARA CONCERT ‘83』奇跡のリリース
yaozoです。
私は熱心な大瀧詠一ファンです。この界隈では、彼のレーベル名「ナイアガラ(「大きな滝」から)」にちなんで「ナイアガラー」と呼ばれます。
大瀧詠一が2013年の冬に亡くなってはや5年以上が経ちました。
そのころには、すでに音楽家としては「隠居状態」にありました。ほんのときたま、山下達郎や、彼が出てみてもいいかな、と思うような方のラジオ番組にゲスト出演する、といった程度だったわけです。
とはいえ、まだ65歳の若さで亡くなってしまい、彼の新曲やプロデュース作品が聴けなくなるとは全く想定していなかったので、とてもショックでした。
私は彼の1981年に『A LONG VACATION』で大ヒットを飛ばしていたころには、生来のへそ曲がりが災いして、意図的に聞かないようにしていました。もったいない話ですが。
とはいえその直後、私の20代が終わるころに「はっぴいえんど」をディープに聞くようになり、それがきっかけで、大瀧詠一を「再発見」し、ソロデビューアルバムから『EACH TIME』まで、はては関連のコンピアルバムも含め、関連するアルバムをすべて買いそろえて激しく聞き込むようになっていました。
中でも一番のお気に入りは『ナイアガラCMスペシャル』です。特に三ツ矢サイダーのCMソングは、全バージョン大好きです。なんなら歌なしのバージョンも大好きです。
ともあれ私が熱心なナイアガラーになったころ、ちょうど大瀧さんは音楽活動をセミリタイアしていたので、仕方なくCDを愚直に聞きこむとともに、その代わりに(というと大変失礼ですが)現役で活動を続けているナイアガラ・ミュージシャンの代表選手である山下達郎の音楽やラジオを聞いてきました。
山下達郎さんがメインパーソナリティを務める『サンデーソングブック』には、年に一度『新春放談』と称して、山下達郎さんが彼の師匠にあたる大瀧詠一をゲストに迎えて、音楽を中心としながらも、雑多でゆる~い番組を続けてくれていました。
しかし、2012年には東日本大震災があったことから『新春放談』は実施されず、そのまま翌年の2013年の年末に亡くなり、その声を聴くことができなくなってしまいました。
そのかわりではないですが、熱心なナイアガラーの一人である、思想家の内田樹さんとその仲間がやっている有料のインターネット音声番組『ラジオデイズ』にゲスト出演して、よもやま話を長時間にわたって聞かせてくれました。これもうれしかったです。
ソロアーティストとしてのシングルCD『恋するふたり(2003年)』のリリースが最後の新作となりました。
正確には、竹内まりあとのデュエットで『恋のひとこと(2003年、竹内の『Longtime Favorites』収録)』が最後のレコーディング曲になります。
ともあれ、その後2013年になくなるまでの10年間は「隠居生活」を送り、音楽は言うに及ばず、映画、野球と幅広い分野における「勉強家」として過ごしたわけです。
2013年以降、新曲を聞くことがかなわない状態となってからは、数年おきにリリースされる『BEST ALWAYS(2014年)』『DEBUT AGAIN(2016)』といった、レア音源を含むコンピレーションアルバムで、生前には本人の意向から聞くことができなかった素材を耳にすることの喜びに浸って、ナイアガラーの1人として生きてきたわけです。
私は本当に出不精で、首都圏の交通の便の良いところに住んでいながら、ライブコンサートにほとんど行きません。
しかし、『DEBUT AGAIN』の影響からだと思うのですが、2018年には、(当選率が低いことで有名な)山下達郎さんのコンサートに生まれてはじめて応募し、ビギナーズラックで当選し、市川のコンサートに行くことができました。しかも、前から8列目ぐらいの良い席で、ご本人が目の前で歌ってくれて大感激でした。
私は知らなかったのですが、達郎さんはコンサートで『大瀧詠一メドレー』を歌うのが恒例らしく、観客の皆さんは、慣れた感じで『ハンド・クラッピング・ルンバ』の手拍子などを入れていました。
また、さすが音質に対するこだわりが強いことで有名な達郎さんなだけあって、これまで足を運んだコンサートの中では、東京国際ホールのBrian Wilsonのコンサートと同じくらい音の良いライブでした。
ただ、別の投稿で書こうと思うのですが、私は毎週『サンデーソングブック』を聞き、お風呂でも機嫌がよいときには山下達郎さんの曲を鼻歌で歌うぐらいの大ファンですし、尊敬もしているのですが、この方と竹内まりあさんの夫婦に対しては、尊敬と同時にねたみのような感情が強く、やや複雑なスタンスをもっています。
それに、達郎さんのパフォーマンス自体には満足したのですが、多くの方が達郎さんのコンサートの常連のような方で、私一人がなんとなく「借りてきた猫」のような感じでした。
たとえば、ずっと座っていたお客さんがある曲で一斉に立ち上がったり、『Let’s dance baby』の途中で持ち込んだクラッカーをパーンと鳴らしたりと、はじめての客からすると、やや閉鎖的で排他的な感じを持ちました。私は最後まで立ち上がるタイミングを失い、ずっと座ったままで、前のお客さんの間から達郎さんの歌う姿を見続け、終了後はなにやら複雑な気持ちで帰路についたことを覚えています。
たとえば、Woody Allenが『Annie Hall』の冒頭で引用していたマルクス兄弟のギャグに『自分を会員にするようなクラブには入りたくない』というのがありましたが、なんとなくそれに近い感覚を持っています。うまく表現できませんが。
そんな中、大瀧詠一さんのライブCDが2019年3月21日に発売されるという、超ド級のニュースを目にしました。
これはもちろん早速入手するしかありません。
Amazonプライム会員なので、注文後すぐに手にしたCD。タイムカプセルで届けられた大瀧詠一さんの歌声とバックの演奏は、完全主義者らしくクオリティの高い生演奏でした。これまで、YouTubeなどで酷い音質でしか聞いたことのない、彼のライブ歌唱に心底しびれたわけです。
また、画質はさておき、「動く大瀧詠一さん」を見ることのできる貴重なDVD(初回限定)は全世界のナイアガラーの涙を誘うに十分価値のあるものでした。
ああ、ナイアガラーでよかった。
ということで、もしあなたがまだナイアガラーでないなら、今すぐ仲間になることをおすすめします。是非。
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